37症候別アプローチ:貧血


症候から診断へ――「37症候別アプローチ」は、病名ではなく“症状”を起点に
考える力を育てるシリーズです。外来・救急・病棟のどの場面でも使える、
再現性のある内科診断フレームを身につけることを目指しています。

貧血はその代表的な症候のひとつです。
「少し疲れやすい」という軽い訴えから始まることもあれば、
急激な出血や溶血でショックに至る場合もあります。
背景には、出血・栄養障害・造血不全・内分泌疾患・悪性疾患など、
多彩で見逃せない病態が潜んでいます。

まずは、貧血という症候を構造的に理解するための地図を描いてみましょう。
どこで障害が起きているのかがわかると、外来でも OSCE でも総合内科でも、
迷いなく次の判断へ進めるようになります。


🔎 貧血とは何か(全体像)

貧血とは Hb の数値そのものではなく、赤血球による酸素運搬が不足した状態です。
SpO₂ が正常でも、赤血球が不足すれば組織は酸素欠乏に陥ります。

原因は大きく次の3つに整理できます:

  • 喪失(Loss):消化管出血、婦人科出血、外傷など
  • 破壊(Destruction):自己免疫性溶血、TMA、G6PD欠損など
  • 造血低下(Underproduction):鉄欠乏、VitB12/葉酸不足、腎性貧血、骨髄不全など

この3分類のどこに当てはまるかを考えるだけで、
鑑別が大きく整理され、問診・診察・検査の優先順位が明確になります。


🧭 この先の学び方:目的に応じた2つのアプローチ

貧血では、外来・OSCEで求められる「まずどう考えるか」と、
総合内科で必要となる「病態理解・検査の判断・治療方針」が異なります。
そこで本ページでは、目的に応じて次の2ルートを用意しています。

  • 🩺 貧血:OSCE・外来アプローチ(鑑別・問診・身体診察)
    → 初期評価に必要な思考フレーム、問診の流れ、身体所見の要点を整理します。
  • 🏥 貧血:総合内科アプローチ(病態生理・検査・治療・判断)
    → 病態の理解、検査の読み方、鉄補充・輸血、フォローアップまで扱う実臨床編です。

ここまでで、貧血という症候の全体像はつかめたと思います。
この先は、あなたが知りたい深さや用途に合わせて読み進められるよう、
2つのルートをご用意しています。
気になるところから、気軽に進んでみてください。


では、貧血という症候が診療の現場でどのように立ち上がってくるのか、
よくある初期場面を一緒にイメージしてみましょう。

🩺 Doorway Information(最初に見える情報)

年齢・性別: 68歳 女性

主訴: ふらつき・息切れ

GA: Alert, slightly pale, not in distress

  • BT: 36.7℃
  • HR: 102 bpm
  • BP: 108/64 mmHg
  • RR: 18/min
  • SpO₂: 98% (RA)

SpO₂ が正常でも、赤血球が不足すれば酸素運搬は破綻します。
脈が速いのに呼吸がつらそうではない――
この“ギャップ”に気づけるかどうかが、貧血の初期評価ではとても大切です。


✍️あとがき

この記事は、Harrison・Guyton・Murtagh を改めて読み直し、
貧血のアプローチを最新の形に整理し直した“刷新版”の導入記事です。
以前の内容は こちらの旧版記事 に参考として残しています。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール