OSCEや医療面接でも頻出の症候「関節痛」を、診断の鍵となる4象限と問診のコツで徹底解説。
🧭 さて、あなたならどうしますか?
70代女性、昨日から右膝が腫れて痛いとの訴え。歩くのもやっとの様子。
体温は 37.9°C、血圧・SpO₂は安定。
🔍 まずはSemantic Qualifierで整理!
“昨日から右膝が痛い” → 急性の単関節痛
こうやって症状を言語的に整理(semantic qualifier)しておくことで、次の推論が圧倒的にやりやすくなります。
🎯 「4象限」アプローチの基本
単関節 | 多関節 | |
---|---|---|
急性 | 感染性関節炎、痛風・偽痛風、外傷 | ウイルス性関節炎、反応性関節炎 |
慢性 | OA、腫瘍、血友病性関節症 | RA、SLE、乾癬性関節炎、感染後性関節炎 |
※ 病因分類(炎症性/非炎症性など)とは異なり、臨床初期対応に有効な整理です。
💡 痛む場所にも注目!
- DIP関節: OAが多い
- PIP関節: RAが特徴的
- 肩関節 + 高齢者: 腱板断裂を疑う
- 仙腸関節痛: 強直性脊椎炎や感染性病変も
📋 原因別の分類(保存用)
- 感染性: 細菌性(緊急!)、ウイルス性、結核性
- 結晶性: 痛風(尿酸)、偽痛風(CPPD)
- 炎症性: RA、SLE、乾癬性、血清反応陰性
- 外傷性・変性: OA、骨折、靱帯・腱断裂
- 腫瘍・血液疾患: 白血病、血友病など
🔬 POCUSや検査も駆使しよう
- 関節穿刺: 白血球数、結晶、Gram染色、培養
- エコー: 関節液、滑膜肥厚、血流(パワードプラ)
- X線: 関節裂隙狭小、びらん、石灰化
- 血液: CRP、RF、抗CCP、尿酸、ANAなど
🧑⚕️ 導入症例に戻ってみよう
この方は「急性の単関節痛+発熱」=まず感染性関節炎の除外が最優先です。
そして次に結晶性、変性性などへ展開するのがセオリー。
🔍 問診のポイント
- 外傷歴の有無
- 既往(痛風、RA、糖尿病、利尿薬)
- 全身症状(発熱、体重減少、他の関節痛)
- 排尿や下痢歴 → 反応性関節炎の手がかり
👣 身体診察と検査
- 関節の腫脹、熱感、発赤、可動域制限
- X線で石灰化 → 偽痛風を疑う
- エコーで滑膜肥厚 → 穿刺の適応判断にも
🔎 鑑別(この時点での優先度)
- 感染性関節炎: 除外最優先!
- 偽痛風: 高齢者+膝+利尿薬使用
- 痛風: やや非典型(膝、女性)
📝 ここからの対応
- 関節穿刺:白血球、結晶、Gram染色、培養
- 画像・血液検査を追加
- 感染性が否定できなければ抗菌薬!
- 結晶性ならNSAIDs、コルヒチンを考慮
▶️ 模擬問診で実践しよう
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🗂️ 関連リンク
📚 参考文献
- UpToDate: Evaluation of monoarthritis in adults
- EULAR Guidelines for Gout and CPPD
- 日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン
ピンバック: 【腰痛の診かた — その痛み、本当に「ぎっくり腰」?】 ー Med Student's Study Room