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🦴 腰痛の診かた — その痛み、本当に「ぎっくり腰」?

腰痛は誰にでも起こる。でも、その中に“危険なサイン”が隠れているかもしれません。


📌 この記事で学べること

  • 急性・慢性の腰痛にどうアプローチするか
  • Red flags を含めた問診・診察のコツ
  • 5大疾患フレームと追加鑑別の整理方法

🚪導入症例

「昨日から、腰が痛くて動けません…」
外来にやってきたのは、50代男性。特に発熱はなく、バイタルサインも安定。
ベッドに横たわりながら「たぶんぎっくり腰だと思います」と言うけれど、あなたは本当にそうだと思いますか?


🤔 どう考える?

腰痛(Low back pain)は、日常診療で最も多い主訴の1つ。
しかし、そこに重篤な疾患が隠れていることもあり、漫然と対処するのは危険です。


🪜 Step 1:問診で見極める(OPQRST + PAM HITS FOSS)

  • Onset: いつから?急に?じわじわと?
  • Provocation/Palliation: 何で悪化・緩和する?体位・動作・咳・いきみ?
  • Quality: 鈍痛?電撃痛?焼けるような?
  • Radiation: 足に放散?どの領域に?
  • Severity: 日常生活に支障は?痛みの強さは?
  • Timing: 朝方?夜間?一日中?

🎯 腰痛に特化した質問

  • 性状: 鈍痛、電撃痛、夜間痛など
  • 放散: 下肢に及ぶ?しびれ・麻痺あり?
  • 随伴症状: 発熱、尿閉、しびれ、失禁など
  • 悪化/緩和因子: 動作、休息、咳・いきみ
  • 月経歴/婦人科歴: 腹部内病変の示唆あり

🧾 Background(PAM HITS FOSS)に沿って確認

  • Previous episode / PMH: 腰痛の既往、糖尿病やがんの既往
  • Allergy: 鎮痛薬などのアレルギー
  • Medications/Supplements: 抗凝固薬、ステロイド、骨粗鬆症治療薬
  • Hospitalization: 最近の入院、手術
  • Injury/Trauma/Surgery: 転倒や事故の既往、脊椎手術
  • Family History: がん・関節炎の家族歴
  • OBGYN: 月経異常、婦人科既往(女性)
  • Sexual History: 性感染症リスクや内臓炎症の可能性
  • Social History: 喫煙・飲酒・職業・薬物使用

🩺 Step 2:身体診察のポイント

  • 視診: 歩行・姿勢・可動域の左右差や痛み
  • 叩打痛: 棘突起上・椎間板・仙腸関節
  • 神経学的所見: 筋力、知覚、腱反射(膝・アキレス)
  • Straight Leg Raising(SLR)テスト: 坐骨神経の絞扼確認
  • Crossed SLR(Lasegue’s sign): 陽性ならヘルニアの可能性がより高い
  • Patrick(FABER)テスト: 仙腸関節由来の痛みの評価
  • Rectal tone(必要に応じて): 馬尾症候群の評価

🚨 Step 3:Red Flagを見逃すな!

Red Flag意味する疾患
50歳以上・悪性腫瘍既往転移性脊椎腫瘍
発熱・夜間痛感染性脊椎炎、膿瘍
体重減少がん、慢性疾患
強い打撲・骨粗鬆症圧迫骨折
尿閉・会陰部のしびれ馬尾症候群

→ これらがあれば、即画像検査や専門科紹介を検討!


🧠 Step 4:5大フレームワーク+追加鑑別を整理しよう

  1. 筋筋膜性腰痛: 運動や姿勢に関連。ストレスや姿勢不良でも。
  2. 椎間板ヘルニア: 放散痛、SLR陽性、神経根症状
  3. 脊柱管狭窄症: 間欠性跛行、前屈で改善
  4. 炎症性腰痛: 若年、朝のこわばり、NSAIDsで改善
  5. 骨折: 高齢者・ステロイド使用者・明らかな外傷

📎 追加で考えるべき鑑別

  • 腎盂腎炎や尿路結石
  • 解離性大動脈瘤
  • 婦人科疾患(子宮筋腫、卵巣腫瘍)
  • がんの脊椎転移
  • 骨髄炎・脊椎感染

🔎 Step 5:今回の症例にアプローチを適用してみる

この50代男性の「ぎっくり腰」という言葉だけで判断してはいけません。
Red flag所見がないか?
神経症状や発熱がないか?
背景疾患は?

を意識しながら問診・診察・鑑別を行い、不要な検査を避けつつも、必要な場合にはCTやMRIを含めた精査を迅速に進めましょう。
📌 Red flagがなければNSAIDsで経過観察。Red flagがあれば画像検査を早期に!


📝 Clinical Reflection(この症例から学ぶこと)

「ぎっくり腰」と言われても鵜呑みにしない。
背景疾患・Red flag・神経症状の有無を見極め、フレームワークで構造化することが、安心安全な腰痛診療への第一歩です。


📌 Clinical Pearls

  • Red flagがあれば即精査!迷ったら画像。
  • 神経所見は左右差と組み合わせて評価。
  • 高齢者・がん既往・ステロイド使用者には特に注意!

🗣️ Clinical English(腰痛の問診・説明で使える英語)

📌 フレーズ

  • “Can you point to where it hurts the most?”
  • “Did the pain start suddenly or gradually?”
  • “Does it radiate to your legs?”
  • “Do you have numbness or tingling?”
  • “Any trouble with urination or bowel control?”

🧩 単語・表現

日本語英語
鈍痛dull pain
電撃痛shooting pain
放散痛radiating pain
しびれnumbness
麻痺paralysis
馬尾症候群cauda equina syndrome
神経根症状radiculopathy
間欠性跛行intermittent claudication
圧迫骨折compression fracture
椎間板ヘルニアherniated disc
脊柱管狭窄症spinal stenosis
筋筋膜性腰痛myofascial back pain

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