黄疸の診かた|OSCE・外来で迷わないための実践アプローチ
🧭 このページの使い方
- OSCE直前:Step 0〜1で「順番」を確認
- 外来中:Step 2〜4を見ながら「聞く・診る・オーダー」を整理
- 紹介判断:Step 5で「どこまで進めて、どこでつなぐか」
Step 0:黄疸を見たら最初に考えること|重症度と緊急性
黄疸を見たとき、まず自分に問いかけるべきことはひとつです。
「この黄疸は、今すぐ対応すべきものか?」
黄疸は、見逃してはいけない疾患を拾い上げるための重要な症候です。
評価の出発点は常に重症度と緊急性になります。
🚨 まず確認する「危険サイン」
- 発熱・悪寒戦慄(急性胆管炎を示唆)
- 腹痛(特に右季肋部痛)
- 意識障害・血圧低下
- 急速に進行する黄疸
👉 これらがあれば、急性胆管炎や敗血症を疑い、救急対応・入院を優先します。
OSCEでも「まず重症度を評価した」という一言は非常に重要です。
Step 1:黄疸の3分類|目的は「病態理解」ではなく「行動決定」
次に行うのが、黄疸の大枠の分類です。
- 肝前性(溶血性)
- 肝性(肝細胞障害)
- 肝後性(閉塞性)
ここで大切なのは、
この分類は診断のためではなく、「次にどう動くか」を決めるためのものだという点です。
- 肝前性:全身状態が安定していれば外来評価が可能なことが多い
- 肝性:肝炎・薬剤性・慢性肝疾患を念頭に精査
- 肝後性:悪性疾患を否定するまで安心しない
💡 臨床の姿勢
閉塞性黄疸が疑わしいときは、「悪性疾患を除外するまで安心しない」という考え方が診療を安全にします。
閉塞性黄疸が疑わしいときは、「悪性疾患を除外するまで安心しない」という考え方が診療を安全にします。
Step 2:問診|黄疸の原因を絞り込むために聞くこと
重症度を評価し、大まかな方向性をつけたら、次は問診です。
黄疸の問診では、「どの分類に近いか」を意識しながら情報を集めていきます。
📝 問診のコア:「発症様式」+「尿・便」+「掻痒」+「発熱/腹痛」+「体重減少」
■ 症状と経過
- 発症時期(急性・亜急性・慢性)
- 持続性か、間欠性か
- 進行性かどうか
■ 黄疸に関連する症状
- 尿の色(暗色尿)
- 便の色(灰白色便)
- 皮膚掻痒感
■ 随伴症状
- 発熱・悪寒
- 腹痛(右季肋部痛、背部放散痛)
- 体重減少・倦怠感
🔍 ここが分岐点
無痛性で進行する黄疸や、掻痒感・体重減少を伴う場合には、
結石性疾患だけでなく、腫瘍性病変も念頭に置いて評価を進めます。
無痛性で進行する黄疸や、掻痒感・体重減少を伴う場合には、
結石性疾患だけでなく、腫瘍性病変も念頭に置いて評価を進めます。
■ 背景因子(PAM HITS FOSS)
- 既往:肝炎、胆石、溶血性疾患、PBC・PSC・AIH
- 薬剤:抗菌薬、スタチン、抗てんかん薬、漢方・サプリ
- 手術・処置歴:胆嚢摘出、ERCP
- 輸血歴、注射歴、刺青
- 飲酒歴
- 渡航歴・生食歴(HAV・HEV)
- 性交渉歴(HBV・HCVリスク)
Step 3:身体診察|頻度は低いが意味のある所見を拾う
■ 視診・全身所見
- 強膜黄染
- 皮膚黄染、掻破痕
- 栄養状態・悪液質
■ 腹部診察
- 肝腫大(硬さ・表面不整)
- 右季肋部圧痛、Murphy徴候
- Courvoisier徴候(無痛性胆嚢腫大)
- 脾腫、腹水
💡 覚え方
Courvoisier徴候が出るほどの無痛性胆嚢腫大は、
腫瘍性病変を強く示唆する「重い所見」として扱います。
Courvoisier徴候が出るほどの無痛性胆嚢腫大は、
腫瘍性病変を強く示唆する「重い所見」として扱います。
■ POCUS
- 胆嚢腫大・壁肥厚
- 胆石・sludge
- 総胆管拡張(目安:6mm以上)
- 主膵管拡張(目安:3mm以上)
- 肝腫瘤、脂肪肝
- 脾腫、腹水
🖥 まずは当ててみよう(POCUSの価値)
黄疸を見たら、可能ならその場で胆嚢・胆管・膵頭部周辺をざっと確認してみましょう。
「胆管拡張があるか」「胆嚢が腫れていないか」だけでも、次の一手がかなり明確になります。
黄疸を見たら、可能ならその場で胆嚢・胆管・膵頭部周辺をざっと確認してみましょう。
「胆管拡張があるか」「胆嚢が腫れていないか」だけでも、次の一手がかなり明確になります。
🧩 画像所見 → マネジメントを意識する
発熱や腹痛を伴い、POCUSで胆管拡張など閉塞を示唆する所見があれば、
「抗菌薬だけで押し切る」ではなく、胆道ドレナージ(例:ERCP / PTGBD)が必要になる状況も念頭に置きます。
※実施の適応や手技の選択は、全身状態・画像所見を踏まえて専門科と相談します。
発熱や腹痛を伴い、POCUSで胆管拡張など閉塞を示唆する所見があれば、
「抗菌薬だけで押し切る」ではなく、胆道ドレナージ(例:ERCP / PTGBD)が必要になる状況も念頭に置きます。
※実施の適応や手技の選択は、全身状態・画像所見を踏まえて専門科と相談します。
Step 4:検査・画像|まずはパターンを捉える
■ 血液検査
- T-Bil / D-Bil
- AST / ALT
- ALP / γ-GTP
- LDH
- PT-INR、Alb、Plt
📌 パターン認識
AST/ALT 優位:肝細胞障害型
ALP・γ-GTP 優位:胆汁うっ滞型
AST/ALT 優位:肝細胞障害型
ALP・γ-GTP 優位:胆汁うっ滞型
■ 尿検査
- 尿ビリルビン
- 尿ウロビリノーゲン
■ 画像
- 腹部エコー(第一選択)
- 造影CT
- MRCP
Step 5:鑑別と紹介判断
■ 主な鑑別
- 溶血性貧血、Gilbert症候群
- ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害
- アルコール性肝障害、脂肪肝
- 総胆管結石、急性胆管炎
- 膵頭部癌、胆管癌、乳頭部癌
- 自己免疫性肝炎・胆管炎、PBC、PSC、IgG4関連疾患
■ 専門医紹介を考える状況
- 閉塞性黄疸が疑われる
- 原因不明の進行性黄疸
- 悪性疾患を否定できない
- 全身状態の悪化
OSCEで使えるまとめフレーズ
「黄疸を認めたため、まず重症度と緊急性を評価しました。
次に肝前性・肝性・肝後性のどこに位置するかを考え、
現時点では閉塞性黄疸が疑われるため、精査と専門医紹介を検討します。」
次に肝前性・肝性・肝後性のどこに位置するかを考え、
現時点では閉塞性黄疸が疑われるため、精査と専門医紹介を検討します。」
おわりに|黄疸を“色の変化”で終わらせない
黄疸は、目に見えてわかりやすい症候である一方、
その背景には感染症、胆道閉塞、悪性疾患など、見逃せない病態が隠れています。
大切なのは、最初から病名を当てにいかないこと。
重症度を評価し、考える順番を守り、必要なところで専門医につなぐ。
それだけで、黄疸診療の質は大きく変わります。
このページが、OSCEや外来で
「次に何を考えればいいか」を思い出す場所になれば嬉しいです。
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🌍 英語診療・OET/USMLE対策
黄疸の英語表現、患者への説明フレーズ、海外試験向けの知識整理は別ページにまとめています。
▶ How to Approach Jaundice (English)
黄疸の英語表現、患者への説明フレーズ、海外試験向けの知識整理は別ページにまとめています。
▶ How to Approach Jaundice (English)
Reference|参考文献・資料
- Murtagh J. Murtagh’s General Practice.
8th Edition. McGraw-Hill Education.
― Jaundice / Abnormal liver function tests における「重症度評価・初期対応・除外すべき疾患」の考え方を参照 - Jameson JL, Fauci AS, et al. Harrison’s Principles of Internal Medicine.
21st Edition. McGraw-Hill.
― Approach to the Patient with Jaundice / Cholestatic Liver Disease - Guyton AC, Hall JE. Textbook of Medical Physiology.
Elsevier.
― ビリルビン代謝、胆汁分泌、生理学的背景の整理に使用 - 住本賢一(編). 肝胆膵疾患のすべてがわかる本.
医学書院, 2021.
― 日本語での肝胆道疾患の全体像整理として参照 - 日本消化器病学会. 肝疾患診療ガイドライン.
南江堂.
― 黄疸を来す肝疾患の基本的な考え方の確認 - UpToDate. Clinical approach to the patient with jaundice or asymptomatic hyperbilirubinemia.
― 黄疸の初期評価・鑑別の整理 - Goldman L, Schafer AI. Goldman-Cecil Medicine.
26th Edition. Elsevier.
― 黄疸および肝疾患アプローチの補足資料 - Oh TE, et al. Oh’s Intensive Care Manual.
8th Edition. Elsevier.
― 重症肝障害・高ビリルビン血症の背景理解として参照
※ 本ページは OSCE・外来初期対応 を目的として構成しています。
胆管炎・胆嚢炎の重症度分類や治療アルゴリズム(Tokyo Guidelines など)については、
総合内科・臨床推論編で詳しく解説する予定です。

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