37症候別アプローチ:腹痛の診かた|OSCE編

腹痛の診かた|OSCE編
— 「なんとなく胃腸炎」から卒業する、“safe diagnosis”という考え方 —

腹痛は、OSCEで最も「差が出る」症候のひとつです。
理由は明確で、頻度が高いにもかかわらず、危険度の幅が極端に広いからです。

外来や救急で遭遇する腹痛の多くは、胃腸炎や便秘など自然軽快する疾患です。
一方で、同じ「腹痛」という主訴の中に、

  • 消化管穿孔
  • 腹膜炎
  • 腸管虚血
  • 大動脈疾患
  • 子宮外妊娠

といった、見逃せば致命的になりうる病態が紛れ込んでいます。
この「日常性」と「致死性」が同居する点こそが、腹痛がOSCEで難しい最大の理由です。


OSCEにおける腹痛の本質

腹痛OSCEで評価されているのは、
「この腹痛の診断名を言えるか」ではありません。

試験官が見ているのは、

  • 危険な腹痛を最初に疑えているか
  • 重症度を意識した行動ができているか
  • 診断が未確定でも、安全な判断ができているか

という、臨床医としての安全設計(clinical safety)です。

その意味で、腹痛はOSCEにおいて「診断力」よりも
思考の順番と優先順位が問われる症候だと言えます。


Murtaghに学ぶ腹痛の考え方

一般診療の名著である Murtagh’s General Practice では、腹痛は一貫して

「初診で正確な診断をつけることが目的ではない症候」

として扱われています。

Murtaghは、腹痛の診療において繰り返し次の姿勢を強調しています。

  • 診断は時間とともに明らかになることが多い
  • 初診時点では病態が完成していないことがある
  • それでも重篤な疾患は見逃してはならない

つまり腹痛では、
「診断を当てること」よりも「危険な状態を除外できているか」
が最優先されます。

この考え方が、いわゆる safe diagnosis です。


safe diagnosisとは何か(腹痛の場合)

腹痛における safe diagnosis とは、ひとことで言えば、

「この時点で、命に関わる腹痛ではないと言えるか」

を、根拠をもって説明できる状態を指します。

重要なのは、ここで

  • 確定診断がついている必要はない
  • 鑑別が一つに絞れていなくてもよい

という点です。

腹痛ではむしろ、鑑別が複数残る方が自然であり、
OSCEでもそれ自体は減点対象にはなりません。

評価されるのは、

  • 危険な腹痛を最初に想起できているか
  • Red Flag を意識した問診・診察ができているか
  • 次に何をすべきか(検査・紹介・経過観察)を説明できるか

という、安全に診療を進めるための思考過程です。


なぜ腹痛では「診断を急がない」のか

① 腹痛は時間とともに姿を変える

腹痛は、来院した時点で「完成している」とは限りません。
典型例が虫垂炎です。

初期には心窩部や臍周囲の不明瞭な痛みとして始まり、
時間の経過とともに右下腹部へ局在し、腹膜刺激症状が出現します。

そのため腹痛では、

「今どこが痛いか」よりも「どう変化しているか」

を重視する必要があります。

② 初期所見が乏しい重篤疾患が存在する

腸間膜虚血のように、
痛みは強いのに腹部所見が軽い疾患があります。

腹部触診だけで安心せず、
痛みの強さ、発症様式、年齢、心血管リスクなどを含めて評価することが重要です。

③ safe follow-upまで含めて初診が完結する

Murtaghの腹痛診療では、
「今すぐ診断をつけること」よりも、

  • 経過観察が可能か
  • どんな症状が出たら再受診すべきか
  • いつ再評価するか

を明確にすることが重視されます。

safe diagnosis = safe follow-up
という考え方です。


本OSCE編の位置づけ

本記事(OSCE編)では、

  • 腹痛を前にしたときの最初の思考
  • 問診・身体診察の順番と優先順位
  • 検査を「考えた後」に使う姿勢

を重視し、
OSCEで「安全に診療できる受験者」と評価される動きを整理していきます。

次章では、腹痛で最初に行うべき
緊急度評価(Red Flags)について、Murtaghの考え方を軸に具体化します。

この記事で学べること

  • OSCEで評価される「腹痛の安全な初期対応」
  • Murtaghに基づく safe diagnosis の考え方
  • 問診・身体診察・検査をどう「順番どおり」組み立てるか
  • 帰してよい腹痛/帰してはいけない腹痛の判断基準

目次(クリックで移動)

① 最初に行うこと:緊急度評価(Red Flags)

腹痛の診療で、最初に行うべきことは診断の検討ではありません
OSCEでも臨床でも、最優先されるのは

「この腹痛は、今すぐ対応が必要な危険な腹痛か?」

という緊急度評価です。

これは Murtagh’s General Practice においても一貫した原則で、
腹痛は最初に safety を確保してから、はじめて鑑別に進む症候とされています。


なぜ腹痛では「最初に緊急度評価」が必要なのか

腹痛は、症状の見た目だけでは重症度を判断できないことが多い症候です。

  • 腹膜炎でも初期は所見が乏しいことがある
  • 腸管虚血では痛みが強いのに腹部が柔らかいことがある
  • 高齢者や免疫不全では症状が非典型になる

そのため腹痛では、

「腹部診察をする前から、すでに危険かどうかの判断は始まっている」

と考える必要があります。

OSCEでは、この思考のスタート位置が明確に評価されます。


OSCEでの第一声は「状態評価」

腹痛OSCEでは、診察室に入った直後から評価が始まっています。

いきなり

  • 「どこが痛みますか?」
  • 「いつからですか?」

と問診を始めるよりも、

全身状態を意識している姿勢

を示すことが重要です。

具体的には、

  • 患者の表情・姿勢(苦悶様か、落ち着いているか)
  • 会話が成立するか
  • 横になれない、前屈位をとっている、動けない様子がないか

といった視診レベルの情報も、緊急度評価の一部です。


まず確認すべき3点(OSCEで外せない)

① バイタルサイン

腹痛では、バイタルサインが最重要情報のひとつです。

  • 血圧(ショックの有無)
  • 脈拍(頻脈・不整)
  • SpO₂
  • 体温

OSCEでは実測値が提示されないこともありますが、
「確認しに行く姿勢」そのものが評価対象になります。

特に、

  • 腹痛+低血圧
  • 腹痛+頻脈

があれば、診断よりも先に重症対応を考えるべき状況です。

② 意識状態

意識障害や見当識障害を伴う腹痛は、それだけで重症です。

感染、ショック、代謝異常など、
腹痛の背景に全身性疾患がある可能性を考えます。

③ 発症様式(onset)

腹痛の緊急度を決めるうえで、発症様式は極めて重要です。

  • 突然発症(瞬間的に始まった)
  • 今まで経験したことのない痛み

これらは、OSCEでも必ず拾うべき Red Flagです。


すぐに上級医・外科コールを考える腹痛(Red Flags)

以下は、Murtaghの考え方と内科外来・救急の実践を踏まえた
「即対応を考える腹痛」です。

  • 突然発症の激烈な腹痛
  • 持続する強い腹痛+腹膜刺激症状
  • ショック兆候を伴う腹痛
  • 腹痛+吐血/下血/黒色便
  • 腹痛+発熱+黄疸
  • 腹痛+意識障害

これらがあれば、
「問診を続ける」よりも「次のアクション」を優先します。

OSCEでは、

「これは重症の可能性があるので、速やかに上級医に相談します」

言語化できるかどうかが重要です。


特に注意すべきハイリスク患者

同じ腹痛でも、患者背景によって緊急度は大きく変わります。

以下の背景を持つ患者では、軽そうに見えても慎重に評価します。

  • 高齢者
  • 免疫不全(ステロイド、抗がん薬、臓器移植後など)
  • 糖尿病
  • 抗凝固薬内服中
  • 既往に心血管疾患がある患者

Murtaghでは特に、
「高齢者の腹痛は、まず重症を疑う」
という姿勢が繰り返し強調されます。


OSCEでのまとめ方(緊急度評価)

腹痛OSCEにおける緊急度評価は、

  • バイタル・意識・発症様式を意識している
  • Red Flag を拾いに行っている
  • 重症時の対応(上級医相談・緊急対応)を言語化できる

この3点が揃っていれば、
safe diagnosis の第一関門はクリアです。

次章では、緊急性を評価したうえで、
腹痛の「痛みの性質」から病態を整理する方法に進みます。

② 痛みの性質から病態を考える

緊急度評価で「今すぐ命に関わる腹痛ではなさそうだ」と判断できたら、
次に行うのは痛みの性質(pain character)の整理です。

腹痛OSCEでは、ここで

  • 鑑別を一気に並べる
  • 臓器名を当てにいく

必要はありません。

重要なのは、
「この痛みは、どのレイヤーから来ていそうか」
を大づかみに分類できていることです。

この考え方は Murtagh’s General Practice においても一貫しており、
腹痛はまず痛みのタイプで整理することが推奨されています。


腹痛はまず3つに分けて考える

腹痛は、以下の3つに分類して考えると、
OSCEでも臨床でも混乱しにくくなります。

  • 内臓痛(visceral pain)
  • 体性痛(somatic pain)
  • 関連痛(referred pain)

この分類は診断名を当てるためではなく、
次に何を考えるべきかを決めるための枠組みです。


① 内臓痛(visceral pain)

内臓痛は、消化管や胆道、尿管などの臓器そのものから生じる痛みです。

特徴は次の通りです。

  • 鈍い、締めつけられるような痛み
  • 周期的・疝痛性であることが多い
  • 部位がはっきりしない

患者さんの表現としては、

  • 「なんとなくお腹が痛い」
  • 「差し込むような感じ」
  • 「波がある」

といった言葉が使われることが多いのが特徴です。

代表的な病態としては、

  • 胆石疝痛
  • 腸閉塞の初期
  • 胃・十二指腸の急性炎症

などが挙げられます。

OSCEでは、

「痛みが周期的か、持続的か」「部位ははっきりしているか」

を確認できていれば、内臓痛を意識できていると評価されます。


② 体性痛(somatic pain)

体性痛は、腹膜や腹壁などの体性神経が刺激されて生じる痛みです。

内臓痛と比べると、特徴は対照的です。

  • 鋭い、刺すような痛み
  • 持続的であることが多い
  • 痛みの部位がはっきりしている

患者は、

  • 「ここが痛い」と指で示せる
  • 動くと痛みが増強する

といった所見を示すことが多くなります。

代表的な病態は、

  • 虫垂炎(進行期)
  • 腹膜炎
  • 消化管穿孔

などです。

体性痛が疑われる場合、
緊急性が高まることを常に意識します。

OSCEでは、
「痛みが局在してきた」「動くと痛む」
という情報を拾えているかが評価ポイントです。


③ 関連痛(referred pain)

関連痛は、
病変部位と痛みを感じる部位が一致しない痛みです。

これは、内臓と体表が同じ脊髄分節で支配されていることによって起こります。

代表例としては、

  • 胆嚢炎による右肩痛
  • 膵炎による背部痛
  • 下壁心筋梗塞による心窩部痛

などがあります。

OSCEで重要なのは、
「腹痛=腹腔内疾患」と決めつけない姿勢です。

特に、

  • 心窩部痛+リスク因子
  • 腹痛だが腹部所見が乏しい

といった場合には、
腹部外疾患も意識できていると高評価につながります。


OSCEでの使い方:分類は“声に出さなくていい”

内臓痛・体性痛・関連痛という分類を、
OSCEでそのまま口に出す必要はありません。

評価されるのは、

  • 痛みの性質を丁寧に聞いているか
  • その情報をもとに、次の診察につなげているか

という思考の流れです。

たとえば、

「痛みがはっきりしてきているので、腹膜刺激症状を意識して診察します」

といった一言があるだけで、
「分類できている」ことが試験官に伝わります


このステップのまとめ

腹痛OSCEにおける「痛みの性質」の評価では、

  • 痛みの強さ・性状・経過を聞けている
  • 内臓痛/体性痛/関連痛を意識している
  • 次の診察(部位別評価)につなげられている

この3点が押さえられていれば十分です。

次章では、
痛みの性質を踏まえたうえでの
③ 部位別アプローチに進みます。

③ 部位別アプローチ|腹痛を「場所」で構造化する

痛みの性質を把握したら、次に行うのは
「どこが痛いのか」=部位(location)の整理です。

腹痛OSCEで最も重要なのは、
鑑別を全部挙げることではなく、危険な疾患を“落とさない順番”で考えているか
という点です。

この考え方は Murtagh’s General Practice でも繰り返し強調されており、
腹痛はまず部位ごとに「見逃してはいけない疾患」を除外する、という姿勢が基本になります。


なぜ「部位別」がOSCEに強いのか

OSCEでは時間が限られているため、

  • VITAMIN CDE を網羅的に回す
  • 鑑別を10個以上並べる

といった戦略は評価されません。

一方で、

  • 痛みの部位から責任臓器を想起している
  • その部位特有の緊急疾患を意識している

ことは、「安全に診断できる医師」として高く評価されます。

そのため本記事では、
腹部を「6つの領域」に分けて整理します。


腹部を6つの領域で考える

腹痛の鑑別を整理するうえで、まず重要なのは
腹部を「どの領域の痛みか」として把握することです。

以下の図は、急性腹症における代表的な部位別鑑別を示したものです。
OSCEや外来で「今どこを診ているのか」を頭の中で整理する際に、非常に有用です。

Differential diagnosis of abdominal pain by location

本記事では、この図を参考にしつつ、
実臨床・OSCEで使いやすい6領域に整理して解説していきます。


実臨床・OSCEの両方で使いやすいのは、
以下の6領域での整理です。

  • 心窩部(Epigastrium)
  • 右上腹部(RUQ)
  • 左上腹部(LUQ)
  • 右下腹部(RLQ)
  • 左下腹部(LLQ)
  • 下腹部正中(Suprapubic)

「9分割」よりもシンプルで、
OSCEでの身体診察とも直結する分類です。


① 心窩部痛(Epigastric pain)

心窩部痛は、
消化管・膵臓・心血管まで含めて考える必要があります。

まず意識すべき鑑別は以下です。

  • 消化性潰瘍・胃炎
  • 急性膵炎
  • 下壁心筋梗塞
  • 大動脈疾患(解離・瘤)

Murtaghでは、
「心窩部痛を胃痛と決めつけない」ことが強調されています。

OSCEでは、

  • 飲酒歴
  • NSAIDs使用
  • 放散(背部・胸部)

を確認できているかが評価ポイントです。


② 右上腹部痛(RUQ pain)

右上腹部痛では、
胆道系疾患を最優先で考えます。

  • 急性胆嚢炎
  • 胆管炎
  • 胆石疝痛
  • 肝炎

身体診察では、

  • Murphy徴候
  • 黄疸の有無
  • 発熱・悪寒

を必ず評価します。

Murtaghの視点では、
RUQ pain+発熱+黄疸は「safe diagnosis が崩れるサイン」とされ、
即座に専門科紹介を考えるべき所見です。


③ 左上腹部痛(LUQ pain)

頻度は低いものの、
重篤疾患が紛れやすい部位です。

  • 脾腫・脾破裂
  • 胃疾患
  • 膵尾部病変

外傷歴、感染症既往(EBVなど)、抗凝固薬使用は重要なヒントになります。

OSCEでは、

「頻度は低いですが、脾臓疾患も念頭に置きます」

という一言があるだけで、
視野の広さが評価されます。


④ 右下腹部痛(RLQ pain)

腹痛OSCEで最重要エリアです。

まず除外すべきは、

  • 虫垂炎
  • 婦人科疾患(卵巣出血・捻転、異所性妊娠)
  • 尿路結石

特に若年女性では、
「妊娠の可能性を考えたか」が必ず見られます。

Murtaghでは、

「右下腹部痛=虫垂炎と決めるな」

と明確に述べられており、
safe diagnosis の観点から婦人科疾患の除外が必須とされています。


⑤ 左下腹部痛(LLQ pain)

左下腹部痛では、

  • S状結腸憩室炎
  • 便秘
  • 婦人科疾患

を中心に考えます。

高齢者の場合、
発熱が目立たない憩室炎も多いため注意が必要です。


⑥ 下腹部正中痛(Suprapubic pain)

下腹部正中の痛みでは、

  • 膀胱炎・尿閉
  • 前立腺炎
  • 婦人科疾患

を意識します。

排尿症状の有無を聞けているかは、
OSCEでの重要な評価点です。


このステップのまとめ

部位別アプローチで求められるのは、

  • 痛みの場所を正確に把握する
  • その部位で「危険な疾患」を最初に考える
  • 次の診察・検査につなげる

という安全重視の思考プロセスです。

次章では、
④ 問診で必ず聞くポイント(OSCEの型)
に進みます。

④ 問診で必ず聞くポイント|OSCEで評価される「腹痛の型」

腹痛の診療では、検査や画像よりも前に
問診だけで「どこまで危険な腹痛を除外できるか」が問われます。

これは Murtagh’s General Practice で繰り返し強調されている、

「診断名を当てるより、安全な判断ができているか」

という safe diagnosis の考え方そのものです。


Murtaghに学ぶ:腹痛問診の基本構造

Murtaghでは、腹痛の問診を以下の流れで行うことが推奨されています。

  • ① Open question(まず自由に話してもらう)
  • ② Focused history(構造化して掘り下げる)
  • ③ Safety check(危険な兆候を最終確認)

OSCEでも、この順番そのものが評価対象になります。


① Open question|最初の一言で全体像をつかむ

最初は、診断を誘導しない問いかけが重要です。

「今日はどうされましたか?」
「どんなお腹の痛みですか?」

ここでは、

  • 患者の言葉での痛みの表現
  • 困りごとの優先順位
  • 不安の有無

を観察します。

Murtaghでは、この段階で遮らないことが強調されています。


② Focused history|OPQRSTで腹痛を構造化する

次に、腹痛を再現性のある型で整理します。
OSCEで最も使いやすいのが OPQRST です。

O:Onset(発症時期・様式)

  • 突然発症か、徐々か
  • 何時間・何日前からか

突然の激痛であれば、穿孔・虚血・捻転などをまず疑います。

P:Provocation / Palliation(増悪・軽快因子)

  • 食事で悪化するか
  • 体動・体位で変化するか

食後増悪は胆道系、前屈で軽快は膵炎を示唆します。

Q:Quality(痛みの性質)

  • 鈍い痛み(内臓痛)
  • 刺すような痛み(体性痛)
  • 波がある疝痛

痛みの性質は病態推定に直結します。

R:Region / Radiation(部位・放散)

  • 最初に痛んだ場所
  • 今一番痛い場所
  • 放散(背部・肩・鼠径部)

「心窩部→右下腹部」は虫垂炎を強く示唆します。

S:Severity(強さ)

  • NRSでの評価
  • 日常生活への影響

所見に比して痛みが強すぎる場合は腸間膜虚血を疑います。

T:Time course(時間経過)

  • 持続性か間欠性か
  • 悪化傾向か、改善傾向か

Murtaghは時間経過を最重要視しています。


③ 随伴症状の確認|腹痛だけで終わらせない

腹痛は単独で評価せず、必ず随伴症状を確認します。

  • 発熱
  • 嘔気・嘔吐(痛みの前か後か)
  • 下痢・便秘
  • 血便・黒色便
  • 黄疸

嘔吐が痛みより先行する場合は、消化管閉塞を疑います。


④ 背景因子の確認|safe diagnosisを完成させる

Murtaghでは、腹痛の問診で背景因子を落とすことは危険とされています。

必ず確認する背景

  • 手術歴(癒着・腸閉塞)
  • 内服薬(NSAIDs・ステロイド・抗凝固薬)
  • 飲酒歴
  • 既往歴(胆石・潰瘍・心疾患)

妊娠可能年齢女性で必須

  • 最終月経
  • 月経周期
  • 妊娠の可能性

これは OSCE では必須チェック項目です。


⑤ Safety check|危険な腹痛を最終確認

最後に、以下を必ず頭の中で確認します。

  • 突然発症の激痛はないか
  • 腹膜刺激症状を示唆するエピソードはないか
  • 高齢者・免疫不全ではないか
  • ショック兆候はないか

ここまで確認できて初めて、
「今すぐ命に関わる腹痛ではない」
と判断できます。


このステップのまとめ

腹痛の問診で重要なのは、

  • 型(OPQRST)を守る
  • 時間経過を重視する
  • 妊娠・薬剤・手術歴を必ず確認する

という safe diagnosis のための情報収集です。

次章では、
⑤ 身体診察のポイント(OSCEで差がつく診察)
に進みます。

⑤ 身体診察のポイント|OSCEで差がつく腹部診察

腹痛の身体診察は、
「所見を当てにいく」ためではなく、「危険な腹痛を見逃さない」ため
に行います。

これは Murtagh’s General Practice における腹痛診察の基本思想であり、
safe diagnosis を完成させる最後のピースです。


Murtaghの原則:hands-off first

Murtaghでは、腹部診察において次の原則が強調されています。

「まずは手を出すな(hands-off first)」

いきなり触診から入ると、

  • 痛みで腹筋が緊張する
  • 正確な所見が取れない
  • 患者の不安が増す

という問題が生じます。

OSCEでは、
視診 → 聴診 → 打診 → 触診
の順番を守れているかが、明確な評価ポイントになります。


① 視診(Inspection)

視診は「情報量が多い」重要なステップです。

チェックポイント

  • 腹部膨隆(腸閉塞・腹水)
  • 手術瘢痕(癒着のリスク)
  • 皮疹(帯状疱疹、紫斑)
  • 体位(前屈・胎児位)

患者が動けないほどの痛みを示していれば、腹膜炎を疑います。


② 聴診(Auscultation)

腹部の聴診では、
腸雑音の「有無」と「性状」を評価します。

代表的な所見

  • 金属音・高調音:機械的腸閉塞
  • 腸雑音減弱・消失:腹膜炎、麻痺性イレウス

OSCEでは、

「腸雑音は減弱しています」

と一言添えるだけで、評価が上がります。


③ 打診(Percussion)

打診は、見落とされがちですが有用です。

評価ポイント

  • 鼓音:ガス貯留(腸閉塞)
  • 濁音:腹水・腫瘤
  • 肝濁音界の消失:消化管穿孔(free air)

OSCEでここまで触れられると、
かなり完成度の高い診察になります。


④ 触診(Palpation)

触診は最後に行います。

ポイントは、
「痛みのないところから、ゆっくり」です。

評価する所見

  • 圧痛の局在
  • 筋性防御(voluntary / involuntary)
  • 反跳痛
  • 腫瘤・拍動性腫瘤

反跳痛や筋性防御は、
腹膜刺激症状を示唆します。


腹膜刺激症状の理解(OSCE頻出)

腹膜刺激症状とは、

  • 反跳痛
  • 筋性防御
  • 板状硬

などを指し、
緊急対応が必要な腹痛のサインです。

Murtaghでは、

腹膜刺激症状がある腹痛は「safe diagnosis ではない」

と位置づけられています。


⑤ 特異的徴候

右上腹部

  • Murphy徴候:胆嚢炎

右下腹部

  • McBurney点圧痛
  • Rovsing徴候
  • Psoas徴候

これらは補助的所見であり、
単独で診断を確定するものではありません。


⑥ 直腸診・婦人科診察

OSCEでは省略されることもありますが、
言及できるかどうかが評価されます。

  • 直腸診:血便、腫瘤、圧痛
  • 婦人科診察:付属器圧痛、頸部動揺痛

特に妊娠可能年齢女性では、
婦人科疾患を考慮しているかが重要です。


このステップのまとめ

腹部診察で重要なのは、

  • 順番を守る(hands-off first)
  • 腹膜刺激症状を見逃さない
  • 所見を過信しない

という安全重視の姿勢です。

次章では、
⑥ 検査・画像の考え方(OSCEでの説明ポイント)
に進みます。

⑥ 検査・画像の考え方|「全部出さない」OSCE的アプローチ

腹痛診療において、検査や画像は
「とりあえず全部出すもの」ではありません。

Murtagh’s General Practice では、

「検査は仮説を確認するために行う」

という姿勢が一貫して強調されています。

OSCEでも、
検査名そのものより「なぜその検査を選んだか」
が評価されます。


検査を考える前に確認すべきこと

検査をオーダーする前に、以下を自問します。

  • 今、除外したい「危険な疾患」は何か
  • その仮説を支持・否定する検査は何か
  • 検査結果で次の行動が変わるか

これが safe diagnosis に直結する考え方です。


① 基本的な血液検査

腹痛でまず考慮する基本検査は以下です。

  • CBC:白血球増多(感染・炎症)、Hb低下(出血)
  • CRP:炎症の有無と程度
  • 電解質・腎機能:脱水、造影CTの可否判断

OSCEでは、

「炎症の有無を評価するためにCBCとCRPを確認します」

と理由付きで述べられると高評価です。


② 臓器特異的検査

痛みの部位・仮説に応じて検査を追加します。

肝胆道系

  • AST / ALT
  • ALP / γ-GTP
  • 総ビリルビン

RUQ pain や黄疸がある場合に有用です。

膵臓

  • アミラーゼ / リパーゼ

心窩部痛+背部放散では必須です。

尿検査

  • 尿路感染
  • 尿管結石(血尿)

下腹部痛・側腹部痛では必ず考慮します。


③ 妊娠反応は「検査」ではなく「前提条件」

妊娠可能年齢の女性において、

妊娠反応の確認は必須

です。

これは Murtagh でも OSCE でも、

  • 検査の一つ
  • というより「診断の前提条件」

として扱われます。

言及できない場合、
重大な減点につながります。


④ 画像検査の位置づけ

画像検査は、
「診断を確定するため」よりも「危険な状態を除外するため」
に行われます。


腹部エコー(Ultrasound)

腹部エコーは、

  • 非侵襲的
  • ベッドサイドで可能

という点で、
OSCEで最も説明しやすい画像検査です。

主な適応は、

  • 胆道系評価(胆石・胆嚢炎)
  • 腹水の有無
  • 尿路拡張
  • 婦人科疾患のスクリーニング

OSCEでは、

「まず侵襲の低い腹部エコーを考えます」

という一言が重要です。


腹部CT(特に造影CT)

CTは、

  • 診断精度が高い
  • 広範な評価が可能

という利点がありますが、

  • 被曝
  • 造影剤リスク

も伴います。

Murtaghでは、

「CTは最後の一押し」

として位置づけられています。

OSCEでは、

  • 高齢者
  • 腹膜刺激症状あり
  • 原因不明で改善しない腹痛

といった場合に選択する理由を述べられると理想的です。


⑤ Watchful waiting という選択肢

すべての腹痛が、
その場で診断・検査を要するわけではありません。

Murtaghでは、

watchful waiting(経過観察)

も safe diagnosis の一部とされています。

ただし条件があります。

  • バイタルが安定している
  • 腹膜刺激症状がない
  • 悪化時の再受診指示が明確

OSCEでは、

「現時点では重篤所見はなく、経過観察としますが、◯◯が出現した場合は再受診を指示します」

と説明できると高評価です。


このステップのまとめ

腹痛における検査・画像の考え方は、

  • 仮説に基づいて選ぶ
  • 侵襲の低いものから
  • 結果で行動が変わるかを意識する

という安全で合理的な判断です。

次章では、
⑦ 機能性腹痛と決めつけないための視点
に進みます。

⑦ 機能性腹痛と決めつけないための視点|Red flagsを見逃さない

外来やOSCEでありがちな落とし穴が、
「検査で異常がなさそうだから機能性腹痛」
と早合点してしまうことです。

Murtagh’s General Practice では、
機能性腹痛の診断は

「除外診断であり、最後に到達するもの」

と明確に位置づけられています。


まず確認すべき Red flags

以下の所見が一つでもあれば、
器質的疾患を強く疑う必要があります。

  • 発熱
  • 体重減少
  • 貧血
  • 夜間痛・夜間症状
  • 血便・黒色便
  • 炎症反応上昇

これらがある腹痛は、
safe diagnosis が成立していない状態です。


年齢は最大のリスクファクター

Murtaghが繰り返し強調しているのが、
年齢によるリスク層別化です。

高齢者の腹痛

  • 症状が乏しい
  • 腹膜刺激症状が出にくい
  • 重篤疾患でも軽い痛みとして訴える

高齢者では、

  • 腸閉塞
  • 腸間膜虚血
  • 悪性腫瘍

を常に念頭に置きます。

OSCEでは、

「高齢者である点を考慮すると、より慎重な評価が必要です」

と一言添えるだけで評価が上がります。


IBS(過敏性腸症候群)との線引き

IBSは頻度の高い疾患ですが、
診断には条件があります。

  • 慢性経過(数か月以上)
  • 腹痛と排便の関連
  • Red flags がない

急性腹痛を、

「IBSの初発」

と診断することは、原則としてありません。

OSCEでは、

「現時点では急性経過のため、機能性腹痛とは判断しません」

と明確に述べることが重要です。


「検査が正常」=安全ではない

検査が正常であっても、

  • 経過が短い
  • 症状が進行中

の場合、
疾患が“まだ見えていない”だけの可能性があります。

Murtaghでは、

「時間が最大の診断ツールになることがある」

と表現されています。


経過観察を選ぶときの条件

機能性腹痛や軽症腹痛として経過観察を選ぶ場合、
以下が必須条件です。

  • バイタルサインが安定
  • 腹膜刺激症状がない
  • Red flags がない
  • 再受診の基準が明確

これは watchful waiting であり、
「何もしない」こととは異なります。


OSCEで使える Safety net の言語化

OSCEでは、以下のように説明できると理想的です。

「現時点では緊急性の高い所見はありませんが、
発熱、痛みの増悪、嘔吐が出た場合はすぐに再受診するよう説明します」

この一文で、
safe diagnosis が完成します。


このステップのまとめ

機能性腹痛と判断する前に、

  • Red flags を必ず確認する
  • 年齢を考慮する
  • 経過観察には条件をつける

ことが不可欠です。

次章では、
⑧ 症例で振り返る|OSCE想定ケース
に進み、ここまでの考え方を実践に落とします。

⑧ 症例で振り返る|OSCE想定ケースで腹痛を読む

ここまで解説してきた腹痛のアプローチを、
OSCEで頻出の症例を用いて実際に当てはめてみます。

大切なのは、
診断名を当てることではなく、「安全に判断できているか」です。


Doorway Information

  • 年齢・性別:20代女性
  • 主訴:右下腹部痛
  • 発症:2日前から
  • バイタル:BT 36.8℃、HR 84、BP 110/72、SpO₂ 98%(RA)

ドアを入った瞬間に確認すべきことは、

  • ショック所見がない
  • 急激な激痛ではなさそう

という第一印象での安全評価です。


① Fact(事実)

  • 2日前からの右下腹部痛
  • ズキズキする痛み
  • 食欲低下あり
  • 発熱なし

ここでは解釈せず、
患者から得られた事実のみを整理します。


② Problem(問題点)

  • 若年女性の急性〜亜急性右下腹部痛
  • 妊娠可能年齢
  • 腹膜刺激症状の可能性

この時点で、

「RLQ pain + reproductive age」

という危険な組み合わせが見えます。


③ Hypothesis(仮説)

VITAMIN CDEを使い、
この時点で考えるべき鑑別を挙げます。

  • Infectious:虫垂炎
  • Vascular:卵巣捻転
  • Endocrine / Ectopic:異所性妊娠
  • Congenital:Meckel憩室
  • Urinary:尿管結石

ここで重要なのは、
「危険なものから挙げている」点です。


④ 問診の要点(OSCE的)

  • 発症様式:突然ではない
  • 移動痛:なし
  • 嘔吐:なし
  • 排尿症状:なし
  • 月経歴:最終月経2週間前

この時点で、

  • 異所性妊娠の可能性は低下
  • 婦人科疾患は完全には否定できない

確率が更新されます。


⑤ 身体診察の要点

  • 視診:腹部膨隆なし
  • 聴診:腸雑音正常
  • 触診:右下腹部に限局した圧痛
  • 反跳痛:軽度あり

限局した圧痛+反跳痛は、
器質的疾患を強く示唆します。


⑥ 検査・画像の考え方

  • 妊娠反応:必須
  • CBC・CRP:炎症評価
  • 腹部エコー:婦人科・虫垂の評価

この症例では、

  • 妊娠反応:陰性
  • WBC・CRP:軽度上昇

より、

虫垂炎の可能性が上昇

します。


⑦ Assessment(評価)

本症例は、

  • 若年女性の右下腹部痛
  • 腹膜刺激症状あり
  • 妊娠は否定的

より、
急性虫垂炎を第一に疑う状況です。

現時点では、
safe diagnosis は成立していません。


⑧ Plan(対応)

  • 外科コンサルト
  • 腹部CT(造影)を検討
  • 絶飲食・輸液開始

OSCEでは、

「虫垂炎が疑われるため、外科へ相談します」

と明確に述べることが重要です。


この症例から学ぶポイント

  • 診断名より安全性を優先する
  • 妊娠可能年齢女性では必ず妊娠を除外
  • 腹膜刺激症状があれば経過観察はしない

これが、
Murtagh的・OSCE的 腹痛アプローチです。

次章では、
⑨ 専門医へ紹介する判断ポイント
に進みます。

⑨ 専門医に紹介するときの判断ポイント|OSCEでの最終判断

腹痛診療のゴールは、
診断名を一つに決めることではありません。

OSCEや初期研修医に求められるのは、

「この腹痛を自分の手元で完結してよいか」
「専門医に引き継ぐべきか」

を、安全に判断できているかです。

これは Murtagh’s General Practice における
safe diagnosis の最終ステップに相当します。


まず押さえる原則

Murtaghでは、腹痛において次の原則が示されています。

  • 診断がつかないこと自体は問題ではない
  • 危険な状態を見逃すことが最大の問題
  • 一人で抱え込まない判断が重要

OSCEでは、

「この時点で専門医に相談します」

と明確に言えるかどうかが評価されます。


外科へ紹介すべき腹痛

以下のいずれかがあれば、
外科コンサルトを考慮します。

  • 腹膜刺激症状(反跳痛・筋性防御・板状硬)
  • 急性腹症が疑われる
  • 虫垂炎・胆嚢炎・腸閉塞が疑われる
  • 画像で器質的疾患が示唆される

OSCEでの言い回し例:

「腹膜刺激症状を認めるため、外科に相談します」


婦人科へ紹介すべき腹痛

妊娠可能年齢女性の腹痛では、
婦人科疾患を常に念頭に置く必要があります。

  • 妊娠反応陽性
  • 下腹部痛+不正出血
  • 付属器圧痛・腫瘤触知
  • 卵巣捻転・異所性妊娠が疑われる

OSCEでは、

「婦人科疾患の可能性があるため、婦人科へ相談します」

と明確に述べることが重要です。


内科的に入院・精査を考える腹痛

外科・婦人科以外でも、
帰宅が不適切な腹痛があります。

  • 原因不明だが症状が進行している
  • 高齢者の腹痛
  • 免疫不全・ステロイド使用中
  • 脱水・電解質異常を伴う

Murtaghでは、

「不安が残る腹痛は帰さない」

という姿勢が示されています。


「帰してよい腹痛」の条件

一方で、経過観察で帰宅可能な腹痛もあります。

必要条件

  • バイタルサインが安定
  • 腹膜刺激症状がない
  • Red flags がない
  • 症状が軽快傾向

これらがそろって初めて、

safe diagnosis が成立

します。


OSCEで必須:Safety net の提示

帰宅させる場合でも、
Safety net の説明は必須です。

OSCEで使える表現例:

「現時点では重篤な所見はありませんが、
発熱、痛みの増悪、嘔吐、血便が出た場合はすぐに再受診してください」

この一文があるかどうかで、
評価が大きく変わります。


このステップのまとめ

腹痛診療における紹介判断では、

  • 腹膜刺激症状を最優先で評価
  • 妊娠可能年齢女性は別枠で考える
  • 「不安が残る腹痛は帰さない」

というMurtagh的 safe diagnosisが重要です。

次章では、
⑩ OSCE・外来で使えるClinical Pearls(まとめ)
に進みます。

⑩ OSCE・外来で使えるClinical Pearls|腹痛診療の総まとめ

最後に、OSCE・初期研修医の外来で
そのまま使える「腹痛診療の要点」をまとめます。

この章だけを読み返しても、
腹痛の安全な初期対応が思い出せる
構成にしています。


腹痛診療のゴールを見失わない

腹痛診療のゴールは、

「診断を当てること」ではなく
「危険な腹痛を見逃さないこと」

です。

これは Murtagh’s General Practice が一貫して示している
safe diagnosis の考え方です。


最初の10秒でやるべきこと

  • バイタルは安定しているか
  • ショックや意識障害はないか
  • 突然発症の激痛ではないか

この時点で引っかかれば、
診断より先に上級医・専門医へ相談です。


問診で外してはいけない3点

  • 発症様式(突然 or 徐々)
  • 痛みの部位と移動
  • 随伴症状(発熱・嘔吐・血便・黄疸)

これだけで、
危険な腹痛の多くは浮かび上がります。


身体診察の鉄則

  • hands-off first(視診→聴診→打診→触診)
  • 腹膜刺激症状を最優先で評価
  • 痛みのないところから触る

腹膜刺激症状があれば、経過観察はしない。
これはOSCEでも臨床でも共通です。


検査・画像の考え方(OSCE頻出)

OSCEで最も評価されるのは、

「なぜその検査を選んだか」

です。

  • 検査は仮説を確かめるため
  • 侵襲の低いものから
  • 結果で次の行動が変わるか

妊娠可能年齢女性では、
妊娠反応は前提条件として必ず言及します。


機能性腹痛と決める前に

以下があれば、
機能性腹痛とは判断しない

  • 発熱
  • 体重減少
  • 貧血
  • 夜間痛
  • 高齢者の初発腹痛

「検査が正常」=「安全」ではありません。


帰してよい腹痛/帰してはいけない腹痛

帰してはいけない

  • 腹膜刺激症状あり
  • 原因不明で悪化傾向
  • 高齢者・免疫不全

帰宅可能(条件付き)

  • バイタル安定
  • Red flags なし
  • 再受診基準を明確に説明できる

Safety net の説明ができて初めて帰宅です。


OSCEで使える一文フレーズ集

  • 「まず生命に関わる腹痛を除外します」
  • 「妊娠可能年齢のため、妊娠反応を確認します」
  • 「腹膜刺激症状があるため、外科に相談します」
  • 「現時点では経過観察可能ですが、◯◯があれば再受診を指示します」

これらを自然に言えれば、
OSCE腹痛は十分合格圏です。


このOSCE編で学べること

  • 腹痛の安全な初期評価
  • Murtaghに基づく思考プロセス
  • OSCEで減点されない判断

腹痛は「考え方」を学ぶ症候です。
このフレームワークは、
すべての症候別アプローチの土台になります。


❓ よくある質問(FAQ)

Q1. 腹痛で「まず最初に」やるべきことは?

バイタルと意識状態の確認です。診断より先に、ショックや腹膜炎など危険な腹痛を除外します。

Q2. 妊娠可能年齢女性の腹痛で必須の検査は?

妊娠反応(尿または血中hCG)です。陰性確認ができるまで、異所性妊娠などを除外できません。

Q3. 「帰してよい腹痛」の条件は?

バイタル安定・腹膜刺激症状なし・Red flagなし・再受診基準を説明できる、が最低条件です。


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🎭 OSCE・実践トレーニング

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腹痛は単独で評価せず、関連する症候(下痢・便秘・嘔吐・胸痛など)と
横断的に考えることで、診断の精度と安全性が大きく向上します。


📚 References

  • Murtagh J. John Murtagh’s General Practice. 8th ed.
    McGraw-Hill Education; 2022.
  • McGee S. Evidence-Based Physical Diagnosis. 4th ed.
    Elsevier; 2018.
  • Harrison TR, et al. Harrison’s Principles of Internal Medicine.
    21st ed. McGraw-Hill Education; 2022.
  • Tintinalli JE, et al. Tintinalli’s Emergency Medicine.
    9th ed. McGraw-Hill Education; 2020.
  • 日本内科学会. 内科診療の進め方.
  • 日本救急医学会. 急性腹症診療ガイドライン.

本記事は上記文献および、内科レジデント向けマニュアル・OSCE対策資料をもとに、
初期研修医・医学生向けに再構成しています。

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