腹痛の診断に迷わない|
研修医のための画像所見まとめ(POCUS〜CT、内視鏡)
腹痛診療では、「どの検査を、どの順番で、何を見るか」が診断精度を大きく左右します。
POCUSで拾い上げるべき所見、Xpで見逃してはいけないサイン、CTで原因と重症度を一気に見抜く視点――
これらを体系的に整理できているでしょうか。
本記事では、腹痛診療における画像所見を、POCUS・Xp・CT・内視鏡まで一気に整理します。
特にCTでは、腸閉塞・虫垂炎・胆道疾患・急性膵炎・致命的所見といった
当直・救急で即使える評価の「型」に焦点を当てました。
初期研修医〜専攻医が、腹痛患者を前に「次に何を見るべきか」を即座に思い出せることを目的としたまとめです。
📌 この記事の内容
腹痛のエコー(POCUS)まとめ|見逃しを減らす“型”と主要所見
腹痛診療におけるエコー(POCUS)は、「確定診断」よりも「危険な病態を拾う」「次の検査(CTなど)を決める」ためのツールです。
このページでは、救急・外来で再現性よく実践できる腹痛POCUSの“型”と、領域別の要点をまとめます。
1. 腹痛POCUSの基本戦略
POCUSの役割(3つ)
- 今すぐ見逃せない病態(出血・破裂・重症感染など)を拾う
- 鑑別を狭める(胆道・尿路・腹水など)
- CTや専門検査へ進む根拠を作る
重要な前提
- 見えたら強い(rule-in)が、見えないだけでは否定できない(rule-out弱い)
- 体型・腸管ガス・疼痛で描出能は大きく変わる
2. 腹痛POCUSの“型”|まず見る順番(テンプレ)
腹痛POCUSは、迷ったらこの順番でOKです(施設・状況で調整)。
- 大血管(AAA):高齢・ショック・突然発症なら最優先
- 腹水:出血/炎症/穿孔のヒント(Douglas窩は必須)
- 胆嚢・胆道:右上腹部痛・発熱・黄疸の文脈
- 腎・尿路:側腹部痛・血尿・疝痛
- 虫垂(疑うとき):右下腹部痛で「見えたら強い」
3. すぐ拾うべき“致命的”所見
AAA(腹部大動脈瘤)
- 突然の腹痛/背部痛、失神、ショック、高齢なら最優先
- 短軸で最大径を測定(腎動脈下〜分岐部)
- 拡張(目安:≥3cm)や壁在血栓を確認
- 疑えば迅速に造影CT+上級医コール
腹水(出血・炎症のヒント)
- 見る場所:肝腎境界、脾腎境界、Douglas窩
- 少量でも「ある/なし」を判断する価値が高い
- 濁り・debrisがあれば炎症/感染の示唆
4. 胆嚢・胆道(RUQ pain)のPOCUS
胆石・胆嚢炎で見るポイント
- 胆石:高エコー+音響陰影(shadow)
- 胆嚢壁肥厚(目安:>3mm)
- 胆嚢周囲液
- sonographic Murphy sign(プローブ圧迫で最大圧痛)
胆管拡張の“入口”
- 総胆管(CBD)拡張を疑えばCT/MRCP/ERCPなどの適応判断につなぐ
- 黄疸・発熱・右上腹部痛の文脈では「胆道系」を強く意識
5. 腎・尿路(側腹部痛・疝痛)のPOCUS
水腎症の評価
- 腎盂・腎杯の拡張(左右差)
- 膀胱の尿貯留も併せて確認(尿閉・前立腺など)
- 結石そのものは見えないことが多いが、水腎症があれば尿路閉塞の根拠になる
6. 虫垂炎(Appendicitis)のエコー|“見つけるコツ”
大前提
- 見えたら強いが、見えないだけでは虫垂炎を否定できない
- 肥満・腸管ガス・疼痛が強いと描出が難しい
探し方の“型”(再現性ルール)
- 盲腸を見つける(右下腹部の大腸を起点にする)
- 盲腸の内側〜後方を丁寧に追う(腸腰筋前面も意識)
- graded compression(ゆっくり圧迫)を使う
虫垂炎を示唆する主要所見
- 盲端で終わる管状構造
- 圧迫しても潰れない(non-compressible)
- 外径 > 6mm
- 壁肥厚、周囲脂肪の高エコー化、周囲液体貯留
- 糞石(高エコー+shadow)
よくある落とし穴(pitfall)
- 回腸末端との誤認(蠕動あり・圧迫で変形しやすい)
- 腸炎(pseudo-appendicitis)で回盲部が紛らわしい
- 「盲端構造」かどうかを最後に必ず確認
次の一手(CTへ進む判断)
- 虫垂が明瞭で炎症所見あり:虫垂炎として扱える
- 虫垂が見えない+臨床的に疑い高い(高齢/非典型/痛み強い):早めにCT
7. いつPOCUSで止めて、いつCTへ進むか
POCUSで十分“方向がつく”例
- 典型的胆石発作/胆嚢炎所見が揃う
- 明らかな水腎症で疝痛(他の危険所見が乏しい)
- 腹水の存在が診療方針(穿刺/入院/CT)を変える
CTを急ぐべきサイン(目安)
- ショック、意識障害、強い持続痛、腹膜刺激症状
- POCUSで説明できない強い痛み(診察と所見が乖離)
- 高齢・免疫抑制・非典型で鑑別が広い
8. まとめ|腹痛POCUSは「拾う→つなぐ」
- 腹痛POCUSの本質は“拾う”こと(致命的病態、胆道、尿路、腹水)
- 虫垂は盲腸起点+圧迫で探す(見えたら強い)
- POCUSで方向を付け、必要ならCTへつなぐ
腹痛におけるXp(腹部単純X線)の役割と読み方
CTが容易に使える時代でも、腹部単純X線(Xp)は腹痛診療の初期評価・情報整理として一定の役割を持ちます。
特にイレウス・穿孔・重症度評価の文脈では、いまでも重要です。
1. 腹痛診療でXpを撮る目的
- 腸閉塞・イレウスの有無をざっくり把握する
- 消化管穿孔を疑う所見を拾う
- CT前に腸管ガス分布を整理する
- 高齢者・夜間・初療でのスクリーニング
👉 Xp単独で確定診断をする検査ではなく、
「次にCTへ進む理由を作る検査」と考えるのが基本です。
2. 撮影方法の基本
- 立位腹部Xp:niveau・free air評価に有用
- 仰臥位腹部Xp:腸管拡張・ガス分布の評価
- 立位が困難な場合は左側臥位でfree airを確認
3. 腸閉塞・イレウスのXp所見
① 小腸イレウスを示唆する所見
- 中央優位の腸管ガス
- Kerckring襞が腸管全周に見える
- 多発するniveau(鏡面像)
- 小腸径拡大(目安:>3cm)
② 大腸閉塞を示唆する所見
- 周辺優位のガス分布
- Haustraが部分的に見える
- 口側大腸の著明な拡張
- 直腸ガスの消失
③ 麻痺性イレウスを示唆する所見
- 小腸・大腸ともに均一に拡張
- niveauは少ない/不明瞭
- 術後・敗血症・電解質異常の文脈
👉 「拡張が局所か、全体か」が最初の分岐点。
4. 穿孔を疑うXp所見(最重要)
- free air(腹腔内遊離ガス)
- 横隔膜下のガス(立位)
- 肝陰影外側のガス
- Rigler sign(腸管両側が描出)
👉 free airを疑った時点で、
造影CT+外科コンサルトを考える。
5. Xpでわかる「その他のヒント」
- 糞石・結石(石灰化)
- 異物(誤飲)
- 巨大結腸(中毒性巨大結腸症など)
6. Xpの限界(重要)
- 閉塞起点の同定は困難
- 虚血・絞扼の評価はできない
- 正常でも腸閉塞を否定できない
👉 Xpは「陰性だから安心」ではなく、
「陽性なら次に進む」ための検査。
7. POCUS・Xp・CTの位置づけ整理
- POCUS:致命的病態を拾う・方向付け
- Xp:ガス分布・穿孔・閉塞の整理
- CT:原因・重症度・治療方針を決める
腹痛診療では、
Xpは「省略」ではなく「使いどころを選ぶ検査」です。
腹痛におけるCTの基本戦略|単純CTと造影CTの使い分け
腹痛診療においてCTは、原因・重症度・治療方針を一気に決める中核の検査です。
POCUSやXpで方向性をつけた後、「どのCTを、なぜ撮るか」を理解しておくことが重要です。
1. 大原則|腹痛CTは「造影」が基本
腹痛の原因は、炎症・虚血・腫瘍・感染など、血流評価が重要な病態が大半を占めます。
- 腸管壁の造影効果(虚血・炎症)
- 臓器実質の濃染(肝・脾・膵)
- 血管評価(塞栓・血栓・出血)
👉 そのため、原則は造影CTと考える。
2. 単純CTで十分な代表例
すべての腹痛に造影が必要なわけではありません。
以下は単純CTで評価可能、もしくは単純が第一選択となる代表例です。
- 尿管結石(high density stone)
- 明らかな消化管穿孔(free air)
- 高度石灰化病変
- 造影禁忌(重度アレルギーなど)の場合の代替
※ ただし、単純CTで所見が乏しくても腹痛は否定できない点に注意。
3. 造影CTが必須となる腹痛の文脈
- 炎症性疾患(虫垂炎・憩室炎・胆嚢炎など)
- 腸閉塞・イレウス(虚血・絞扼の評価)
- 腸管虚血(壁造影低下)
- 胆道・膵疾患
- 腫瘍性病変
👉 「虚血・壊死・重症度」を判断したいときは造影一択。
4. 造影CTで必ず見る共通チェックポイント
① 腸管
- 壁肥厚の有無・範囲
- 造影効果の低下・不均一(虚血・壊死)
- 周囲脂肪織濃度上昇(炎症)
② 腸間膜・血管
- 血管の途絶・血栓
- 腸間膜浮腫
- whirl sign(捻転)
③ 腹腔内液体
- 腹水の有無・量
- 局所的液体貯留(膿瘍・穿孔)
④ 実質臓器
- 肝・脾・膵の腫大、造影不良
- 膵周囲脂肪織炎症
5. 造影相の考え方(腹痛ではここまでで十分)
- 動脈相:血管閉塞・出血・虚血評価
- 門脈相:腸管・実質臓器・炎症評価(最重要)
👉 腹痛診療では、門脈相が最も情報量が多い。
6. 腎機能・アレルギーがある場合の考え方
- 腎機能障害があっても、救命優先なら造影を躊躇しない
- リスクとベネフィットを天秤にかける
- 代替(単純CT・US)では限界があることを理解
👉 「造影できない」ではなく「なぜ造影しないか」を言語化する。
7. CT総論のまとめ
- 腹痛CTの原則は造影CT
- 単純CTで足りる例は限られる
- CTの目的は原因・重症度・治療方針決定
- POCUS・Xpで方向をつけ、CTで決める
腹痛におけるCTの考え方と読影の型
腹痛診療においてCTは、原因・重症度・治療方針を一気に決定する中核の検査です。
重要なのは「何となく眺める」のではなく、毎回同じ順番(型)で評価することです。
1. 腹痛CTの大原則|原則は造影CT
腹痛の原因は、炎症・虚血・腫瘍・感染など血流評価が重要な病態が大半を占めます。
- 腸管壁の造影効果(虚血・炎症)
- 実質臓器の濃染(肝・脾・膵)
- 腸間膜・血管の評価
👉 したがって、腹痛CTは原則として造影CT。
2. 単純CTで足りる代表例
- 尿管結石(高吸収域として描出)
- 明らかな消化管穿孔(free air)
- 高度石灰化病変
- 造影禁忌時の代替評価
※ 単純CTで所見が乏しくても、腹痛を否定できるわけではない。
3. CTで必ず確認する共通チェック項目
① 腸管
- 拡張の有無・範囲
- 壁肥厚
- 造影効果低下・不均一(虚血)
② 腸間膜・血管
- 腸間膜浮腫
- 血管の途絶・血栓
- whirl sign(捻転)
③ 腹腔内液体
- 腹水の有無・量
- 限局性液体貯留(膿瘍・穿孔)
④ 実質臓器
- 肝・脾・膵の腫大、造影不良
- 膵周囲脂肪織炎症
CT各論①|腸閉塞・イレウスの見方
1. 拡張腸管の同定(小腸か、大腸か)
- 小腸:Kerckring襞が全周、中央寄り
- 大腸:Haustraが部分的、周辺寄り
2. 口径差の有無(機械的 vs 機能的)
- 口径差あり:機械的腸閉塞を示唆
- 口径差が乏しい・均一拡張:麻痺性イレウスを示唆
3. 閉塞起点(transition point)の探し方
- 拡張腸管を口側→肛門側へ連続性で追う
- 急に細くなる部位を同定
- その周囲で原因を探す
4. 閉塞の原因を示唆する所見
- 腫瘍:不整な壁肥厚・狭窄
- 癒着:原因構造が見えないことも多い
- ヘルニア:腸管の逸脱
- 捻転:whirl sign
- small bowel feces sign:閉塞支持所見
5. closed loop obstruction(最重要)
- 離れた2点が同一部位で締め付けられる
- 拡張腸管が限局して集簇
- beak sign
- whirl sign
👉 虚血リスクが高く、緊急対応が必要。
6. 虚血を示唆するCT所見
- 腸管壁の造影不良・消失
- 腸間膜浮腫、腹水
- 腸管壁内ガス
- 門脈気腫
CT各論②|虫垂炎の見方と虫垂の探し方
1. 大原則|虫垂は盲腸から探す
虫垂は必ず盲腸から分岐する盲端構造です。
「虫垂を探す」のではなく、盲腸を同定することが出発点です。
2. 再現性のある虫垂の探し方
- 右下腹部で盲腸を見つける
- 盲腸の内側〜後内側を意識
- 盲腸から連続する管状構造をスライス間で追う
※ 回盲部から数3cm、5mmスライドでだいたい6スライド文下にずらしたとこを入念に
3. 虫垂炎を示唆するCT所見
- 虫垂径 > 6mm
- 壁肥厚・層構造不明瞭
- 内腔液体貯留
- 周囲脂肪織濃度上昇(dirty fat sign)
- 糞石(appendicolith)
4. 合併・重症度評価
- 膿瘍形成
- 穿孔(free air、限局性液体貯留)
5. 鑑別で注意する病態
- 回盲部腸炎(pseudo-appendicitis)
- 盲腸・上行結腸憩室炎
- 婦人科疾患
CT所見まとめ|腹痛CT読影のチェックリスト
- 造影は適切か
- 腸管は拡張しているか(小腸/大腸)
- 口径差・transitionはあるか
- 原因病変は何か
- 虚血・絞扼のサインはないか
この順番を守ることで、腹痛CTの見落としを最小化できます。
CT各論③|胆道系・膵疾患の見方
胆道・膵疾患は、腹痛+発熱・黄疸・炎症反応を伴うことが多く、
CTでは胆管拡張・壁肥厚・周囲脂肪織炎症・実質臓器の造影を系統的に評価します。
1. 胆道系CTの基本|まず「拡張」を見る
① 肝内胆管拡張
- 肝門部から末梢へ樹枝状に胆管が目立つ
- 門脈枝より太く見える場合は拡張を疑う
② 肝外胆管(総胆管)径
- 一般に6–7mm以上で拡張を疑う
- 高齢者・胆嚢摘出後では軽度拡張が生理的なことあり
2. 胆道閉塞の原因検索
- 総胆管結石:高吸収域(単純CTでも見えることあり)
- 胆管癌:胆管壁肥厚・狭窄+上流胆管拡張
- 膵頭部癌:胆管+膵管の同時拡張(double duct sign)
3. 急性胆嚢炎のCT所見(合併症評価)
- 胆嚢壁肥厚
- 胆嚢腫大
- 周囲脂肪織濃度上昇
- 胆石の存在
※ 診断の第一選択は超音波だが、CTは穿孔・膿瘍など重症度評価に重要。
CTで見る急性膵炎|所見と重症度評価
4. 急性膵炎の基本CT所見
- 膵腫大
- 膵周囲脂肪織濃度上昇
- 膵周囲・後腹膜液体貯留
5. 日本で用いられてきたCT重症度評価の考え方
急性膵炎のCT評価では、膵そのものよりも「膵周囲炎症がどこまで広がっているか」が重視されてきました。
特に炎症や浸出液が腎下縁を越えるかどうかは、重症化リスクを判断する重要な指標です。
6. 膵周囲炎症の広がりによる評価(CT Grade)
Grade 0
- 炎症が膵周囲に限局
- 軽症相当
Grade 1
- 炎症が前腎傍腔(anterior pararenal space)まで進展
- 中等症相当
Grade 2
- 炎症・浸出液が腎下縁を越えて後腹膜へ進展
- 重症化リスクが高い
👉 CTでは脂肪織濃度上昇や液体貯留の広がりとして評価する。
7. 造影CTによる膵壊死の評価
- 膵実質の造影不良・欠損は膵壊死を示唆
- 壊死範囲が広いほど重症
※ 発症24–48時間以内では壊死は過小評価されやすいため、
初期は炎症の広がり、48–72時間以降に壊死評価を行う。
8. 現行分類(Revised Atlanta)との位置づけ
- 軽症:臓器不全なし
- 中等症:一過性臓器不全または局所合併症
- 重症:持続性臓器不全
CTでの炎症進展や壊死は、臨床的重症度評価を補強する情報として用いる。
9. 急性膵炎CT評価の実践ポイント
- 発症時期(早期か48–72h以降か)を意識
- 膵周囲炎症の広がりを確認(腎下縁を越えるか)
- 造影で膵実質が染まっているか
- 後腹膜液体貯留・感染兆候の有無
👉 「どこまで広がっているか」→「壊死があるか」の順で考える。
CT各論|腹痛で絶対に見逃してはいけない致命的所見
腹痛のCTでは、原因検索より先に「今すぐ介入が必要な所見」を必ずスクリーニングします。
以下は見つけた時点で緊急対応(上級医コール/外科・IVR相談)を要する所見です。
1. 腸管虚血・壊死を示唆する所見
- 腸管壁の造影不良・造影消失(虚血を強く示唆)
- 腸管壁肥厚+浮腫(target signを含む)
- 腸間膜浮腫、腹水(特に増加)
- 静脈うっ血所見(腸間膜血管怒張など)
2. 腸管壁内ガス(Pneumatosis intestinalis)
- 腸管壁内に線状・泡状のガス像
- 腸管虚血・壊死の可能性が高い(臨床とセットで判断)
👉 門脈気腫を伴う場合は最重症として扱う。
3. 門脈気腫(Portal venous gas)
- 肝内(特に肝辺縁まで)に樹枝状のガス像
- 腸管虚血・壊死、重症腸炎、穿孔などの背景を疑う
👉 見たらまず腸管虚血を最優先で除外/対応。
4. free air(消化管穿孔)
- 腹腔内遊離ガス(肝表面、横隔膜下、腸管間など)
- 少量でも臨床的意義が大きい
- 局所の液体貯留・膿瘍形成があれば穿孔部位推定に有用
5. closed loop obstruction / 絞扼性腸閉塞(虚血リスク高)
- 限局した拡張腸管の集簇
- beak sign(先細り)
- whirl sign(腸間膜血管の渦巻き)
- 腸間膜浮腫、腹水、腸管壁造影不良を伴えば緊急度さらに上がる
6. 重大な血管系イベント
- 腸間膜動脈閉塞(SMA occlusion):血管途絶、腸管壁造影低下、腸管拡張/浮腫
- 腸間膜静脈血栓:静脈内血栓、腸管壁浮腫、腹水
- 腹部大動脈瘤破裂:後腹膜血腫、造影剤漏出(あれば)
- 活動性出血:造影剤の血管外漏出(extravasation)
7. “致命的所見”チェックリスト(読影の型)
- 腸管壁はしっかり造影されているか(虚血なし?)
- 腸管壁内ガスはないか
- 門脈内ガスはないか
- free airはないか
- closed loop / 絞扼所見はないか(beak / whirl)
- 主要血管の閉塞・血栓・出血はないか
このチェックをルーチン化すると、腹痛CTの見落としを劇的に減らせます。
腹痛診療における内視鏡の位置づけ
内視鏡は、CTやエコーで器質的疾患が疑われた後の確定診断、
あるいは出血・炎症・腫瘍の直接評価に用いられます。
本セクションでは、国試・初期研修医レベルで押さえておきたい代表的所見を整理します。
1. 上部消化管内視鏡(EGD)
腹痛でEGDを考える場面
- 心窩部痛・上腹部痛
- NSAIDs内服歴
- 吐血・黒色便
代表的内視鏡所見
- 消化性潰瘍:白苔を伴う陥凹、周囲発赤
- 出血性潰瘍:露出血管、Forrest分類
- 急性胃粘膜病変(AGML):びまん性びらん・出血
- 逆流性食道炎:食道粘膜のびらん・発赤
注意点
- 穿孔疑いでは原則CT優先
- 腹膜刺激症状が強い場合は適応を慎重に判断
2. 下部消化管内視鏡(CS)
腹痛でCSを考える場面
- 下腹部痛
- 血便・粘血便
- 慢性腹痛+体重減少
代表的内視鏡所見
- 憩室炎:周囲粘膜の発赤・浮腫(急性期は原則CT)
- 虚血性腸炎:縦走潰瘍、浮腫、紫調粘膜
- 潰瘍性大腸炎:連続性のびまん性炎症、易出血性
- クローン病:縦走潰瘍、敷石像、非連続性病変
- 大腸癌:不整隆起、狭窄
注意点
- 急性腹症では穿孔リスクを考慮
- 虚血性腸炎は軽症例で慎重に
3. 超音波内視鏡(EUS)
EUSが有用な腹痛の文脈
- CTで原因不明の膵・胆道系病変
- 小病変の評価
代表的所見
- 膵腫瘍:低エコー腫瘤
- 胆管結石:高エコー+音響陰影
- 慢性膵炎:膵実質不均一、石灰化
👉 CTやMRIで不明瞭な場合の精査手段。
4. ERCP(診断+治療)
ERCPを考える場面
- 急性胆管炎
- 総胆管結石
- 閉塞性黄疸
ERCPで得られる所見
- 胆管狭窄
- 充盈欠損(結石)
- 胆汁排出不良
重要な注意点
- 侵襲的検査
- ERCP後膵炎のリスク
- 現在は診断目的ではMRCP/EUSが優先
腹痛診療における内視鏡まとめ
- EGD:上腹部痛・出血の評価
- CS:下腹部痛・血便の評価
- EUS:CTで不明な胆膵病変の精査
- ERCP:胆道系疾患の治療目的
画像(CT・エコー)で全体像を把握 → 内視鏡で確定診断・治療という流れが基本。
最終まとめ|腹痛診療で画像・内視鏡をどう使うか
腹痛診療では、「とりあえずCT」ではなく、病態を想定しながら画像モダリティを使い分けることが重要です。
- POCUS / エコー:初期評価・拾い上げ(胆嚢、腎、腹水、AAA、虫垂)
- Xp:穿孔・高度腸閉塞のスクリーニング
- CT(原則造影):原因・重症度・治療方針の決定
- 内視鏡:確定診断・治療
特にCTでは、以下の「型」を毎回意識することで、見落としを最小限にできます。
- 造影は適切か
- 腸管の拡張・口径差はあるか
- 閉塞起点や炎症の広がりはどこか
- 虚血・穿孔・壊死といった致命的所見はないか
また、急性膵炎では膵そのものよりも「炎症がどこまで広がっているか」、
特に腎下縁を越えて後腹膜へ進展しているかが、重症化を考える重要なポイントとなります。
画像で全体像を把握し、必要に応じて内視鏡で確定診断・治療へ進む――
この流れを身につけることが、腹痛診療の質を大きく高めます。
Reference
- Harrison’s Principles of Internal Medicine
- McGee S. Evidence-Based Physical Diagnosis
- 日本消化器病学会 急性膵炎診療ガイドライン
- 日本膵臓学会 急性膵炎重症度判定基準
- Tokyo Guidelines(急性胆嚢炎・胆管炎)
- Revised Atlanta Classification of Acute Pancreatitis
※ 本記事は、初期研修医・専攻医が当直や日常診療で即座に思い出せることを目的に構成しています。
