⚡️突然のけいれん発作、どう診る?てんかんとの違い・初期対応・検査の進め方を総まとめ!

突然のけいれん発作――患者が目をむき、手足を激しく震わせ、意識を失う様子に、誰もが動揺する場面です。初期対応を間違えれば、命に関わる重大な疾患を見逃してしまうかもしれません。一方で、「発作=てんかん」と早合点するのも危険です。

OSCE(客観的臨床能力試験)では、こうした緊急度の高い症候への冷静な対応が求められます。では、実際の臨床現場でどのように“けいれん”を評価し、診断につなげていけばよいのでしょうか?本記事では、けいれん症状に直面したときの初期評価から鑑別診断、必要な検査、てんかんとの違いまで、OSCEにも対応した臨床推論の視点で徹底解説します。

この記事で学べること

  • けいれん発作の正確な見極め方
    意識消失や四肢のけいれんを目撃したとき、本当に「けいれん」なのか?それとも別の疾患なのか?―その初期判断の視点を身につけます。
  • 問診と身体所見で絞り込む“攻め方”
    OPQRSTやPAM HITS FOSSを活用して、病歴から鑑別を導くための「使える質問」と「見るべき所見」を整理します。
  • てんかんとそれ以外を分ける“決定打”
    てんかん発作と心因性発作、失神、中枢神経感染、電解質異常などの見分け方、検査の使い方をOSCEでも応用できる形で解説します。

導入症例:救急外来に駆け込んだ親子

「スーパーで買い物してたら、急に倒れて痙攣してたって…。
気づいたら救急車の中で、頭がぼーっとしてて、手足がだるい感じがするんです。
でも正直、自分では何が起きたか全然覚えてなくて…怖いです。」

設定メモ:
年齢・性別:28歳 男性
主訴:意識消失+痙攣(目撃あり)
現場情報:スーパーマーケット内で突然転倒し、四肢をバタバタ動かしていた。2〜3分で自然軽快。現在は意識清明だが軽度の混乱あり。
既往歴・薬歴などは不明。救急隊より「舌を噛んだ様子あり」との情報。


第一印象で考える!“それ、本当に発作?”

🧠 意識消失とけいれんの違いを見極める

患者が倒れた――
それが「けいれん発作」なのか、「単なる失神」なのか。ここを正確に見極めることが、初期対応では非常に大切です。

意識消失の多くは、実は神経原性ではなく心血管性(迷走神経反射、起立性低血圧、不整脈など)が原因となっていることも多いのです。
しかも、けいれん性の動き(myoclonic jerks)は失神でも数秒間だけ起こることがあるため、見た目だけでは判断がつかないケースもあります。

👉 意識消失について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶ 意識消失(syncope)の診断アプローチはこちら

👀 目撃情報は、なによりも価値がある

問診の中で、“目撃者の証言”は超ハイバリュー情報です。
本人が覚えていないからこそ、「どのように倒れたのか」「どんな動きをしていたのか」「どのくらい続いたのか」「その後どうだったか」――これらを細かく聴く必要があります。

目撃者が家族や同僚でなく、通りすがりの人でも、重要なヒントが得られることも少なくありません。

🆘 【コラム】けいれんを目撃したときの現場対応

たとえば、あなたが外で“けいれんして倒れている人”に出会ったとします。
そんなとき、どう動けばいいでしょうか?

基本は以下の3ステップです。

  1. 安全確保:周囲の危険(車道、階段、鋭利な物など)を除き、患者の頭の下にタオルやカバンをあてて保護します。
  2. 発作の観察と記録:可能であれば「発作の様子」「持続時間」「どんな順序だったか」を記録(動画でも可)しておきましょう。
  3. 救急要請(119):発作が5分以上続く/回復しない/明らかに異常な様子があれば、すぐに救急車を呼びましょう。

💡医療者としてこの場に居合わせたなら、「けいれんの目撃情報を誰が記録しているか」を確認し、救急隊・医師に伝達できるよう働きかけるのも大切な役割です。

🔄 てんかん vs 他の原因(失神・心因性・脳卒中)

以下のように、「けいれんに見えるが違う」病態とてんかん発作の違いを整理しておくと、OSCEでも臨床でも応用できます。

特徴てんかん発作心因性非てんかん発作(PNES)失神脳卒中(出血など)
発症様式突然・予兆なしゆっくり・演技的に見えることも徐々に・立位で発生急性(頭痛や嘔吐を伴うことも)
持続時間数秒〜数分長時間(10分以上も)数秒〜1分未満持続性あり
身体所見舌咬傷・尿失禁・意識回復後の混乱一貫しない運動・反応性保持蒼白・徐脈・迅速な回復神経脱落症状(麻痺など)
発作後状態ぼーっとする・疲労感明瞭・記憶明瞭なこともすぐに元どおり持続する神経症状あり

このように、発作に見える症状には、本当に神経学的な発作なのか、それとも模倣しているだけなのかを見極めることが求められます。
初期対応では「けいれん」と決めつけず、「意識消失の鑑別」から丁寧に評価していくことが大切です。


【発作性イベントの見極め】Fact / Problem / Hypothesisで鑑別を整理しよう

倒れた、けいれんした、意識がなかった――
このような患者に出会ったとき、「どこから手をつければいいのか分からない」という不安、ありませんか?

そんなとき役立つのが、Fact(事実)→ Problem(問題の再定義)→ Hypothesis(仮説)の3段階で考える臨床推論です。

🧾 Fact(見た事実・得られた情報)

  • 28歳男性、買い物中に突然転倒
  • 手足をバタバタさせる動きが数分続いた(目撃情報)
  • 舌咬傷あり、尿失禁は不明
  • 発作後は数分間もうろうとし、現在はやや混乱がある
  • 発熱・頭痛なし、前駆症状も特になし
  • 内服薬・既往歴なし

🔍 Problem(何が“問題”なのか、再定義する)

急性かつ突発的な意識消失と不随意運動を伴う発作様イベント
一見てんかん発作に見えるが、失神・代謝異常・脳血管障害・中毒・心因性発作などの可能性も含めて再評価が必要

💡 Hypothesis(どんな疾患が考えられるか?)

「見た目が“けいれんっぽい”」というだけで終わらせず、広く鑑別を出していくために、VITAMIN CDEを使って構造的に整理しましょう。

区分疾患例
Vascular(血管性)出血性脳卒中、てんかん後遺症
Infectious(感染症)脳炎、髄膜炎(→発熱や項部硬直)
Trauma(外傷)頭部打撲・既往の外傷による局所発作
Autoimmune / Epilepsyてんかん(初発・JMEなど)
Metabolic / Electrolyte低Na、低Ca、低血糖、肝性脳症
Iatrogenic / Intoxication向精神薬、抗うつ薬、アルコール離脱
Neoplastic脳腫瘍、転移巣
Congenital遺伝性てんかん、構造異常
Degenerative / Psychogenic心因性非てんかん発作(PNES)
Endocrine / Others甲状腺異常、ストレス、睡眠障害など

🔎 Need To Know(この時点で、何を知るべきか?)

この時点で必要なのは、「発作の様子をより詳細に知る」ための追加情報です。
以下のようにカテゴリごとに分けて整理しておくと、問診→身体診察→検査への導線がスムーズになります。

カテゴリ取りに行くべき情報(NTK)
HPI(現病歴)前駆症状、誘因、発作様式、回復の様子、持続時間、目撃情報
PMH(既往歴)てんかん、脳卒中、外傷、感染症、精神疾患
FH(家族歴)てんかん、てんかん体質、突然死
Social / Substanceアルコール、ドラッグ、睡眠不足、生活背景
Medications抗けいれん薬中断、向精神薬、中毒を起こす薬剤
Physical Exam(次ステップ)意識レベル、神経所見、外傷痕、バイタル変化
Labs / Imaging(先読み)血糖、Na, Ca, Mg, CK, 脳画像、EEGの要否判断

このように、「事実→再定義→仮説→必要情報の明確化」という流れを踏むことで、
けいれん症状の裏に隠れた真の病態に近づくことができます。


けいれんとてんかんの違いを整理しよう

問診を始める前に、まずは「けいれん」と「てんかん」の関係性について整理しておきましょう。
この基礎があるだけで、発作性イベントの捉え方が一気に深まります。

📘 けいれんとは?てんかんとは?— その違い、ちゃんと説明できますか?

❓「けいれん」とは

けいれん(seizure)とは、
脳の神経細胞が一時的に異常な電気活動を起こし、意識障害や運動異常などを引き起こす状態のことを指します。

  • 一過性で、短時間(通常は1〜2分以内)
  • 原因はさまざま(てんかんだけでなく、感染・代謝・薬物なども)

❓「てんかん」とは

てんかん(epilepsy)は、
けいれん発作を繰り返し起こす慢性的な疾患です。
つまり、てんかん=“けいれんが繰り返される病気”とイメージしてOKです。

  • 原因不明なこともある(特発性)
  • 焦点性(部分)か全般性かで分類される
  • 診断には「2回以上の非誘発性発作」または「再発リスクの高い発作」などの国際基準(ILAE)

🔍 発作のタイプって?

けいれん発作は大きく分けて以下のように分類されます:

分類(日本語/英語)特徴
全般性発作(Generalized seizure)脳全体を巻き込む|意識障害あり強直間代発作(tonic-clonic seizure)、欠神発作(absence seizure)
焦点性発作(Focal seizure)脳の一部から始まる|意識保たれることも単純部分発作(simple partial seizure)、複雑部分発作(complex partial seizure)
ミオクローヌス(Myoclonic seizure)一瞬ビクッとする|短く反復的JME(若年ミオクローヌスてんかん)などに典型
欠神発作(Absence seizure)数秒間ぼーっとする|周囲に気づかれにくい小児に多い、3Hz spike-wave pattern
心因性非てんかん発作(PNES: Psychogenic Non-Epileptic Seizure)精神的要因により模倣される動きに不自然さ、長時間、反応性あり

💬 けいれん発作 ≠ てんかん発作

けいれんは「症状」、てんかんは「病名」です。
つまり、「てんかんじゃないけどけいれんした」人もいれば、逆に――

「けいれんを伴わないてんかん」も存在します。

  • 欠神発作(absence seizure):数秒間“ぼーっとする”、まばたきだけで終わる
  • 自律神経性発作(autonomic seizure):吐き気、顔面紅潮、胃部不快など
  • 感覚性発作(sensory seizure):におい、音、味などの異常知覚のみ
  • 認知性発作(cognitive seizure):一時的な失語、記憶の飛びなど

👉 「けいれんしていないからてんかんではない」とは言えません。

てんかんは“脳の電気信号の異常”であり、その現れ方は非常に多彩です。

🧠 Non-Convulsive Status Epilepticus(NCSE)にも注意!

さらに重要なのが、非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)の存在です。
これは“けいれんを伴わず、意識障害だけが持続する”てんかん重積状態です。

  • 病棟などで「せん妄」「意識が変…」とされて見逃されることも
  • 微細な咀嚼運動や瞬き、反応性の低下のみが続く
  • EEG(脳波)なしでは診断困難

病棟の高齢者・感染後・脳卒中後の“意識低下が長引く”患者では必ずNCSEを疑う視点を!


では、OSCEやstep2 CSで必要となる問診から診察、その後の検査にかけてを解説していきます

Step 1:問診 〜「いつ・なにが・どう起こったか」を丁寧に聴く〜

🗣 OPQRSTで発作の実態を描く

けいれんの問診は、ただ「どんな発作でしたか?」と聞くだけでは不十分です。
大事なのは、「それは本当に発作だったのか?」「てんかんなのか?」を見極めるヒントを少しずつ引き出していくこと。

そのために有効なのが、OPQRSTの枠組みです。
それぞれの項目で“何を聴くか”“どんな答えがカギになるか”を一緒に見ていきましょう。

項目聴くべきこと解説
O: Onsetいつ始まった?急だった?徐々に?てんかんは突発的、失神は前駆症状があることも
P: Provocationきっかけは?睡眠不足?発熱?光?光刺激や疲労は特定のてんかんで誘因に
Q: Qualityどんな動き?震え?つっぱり?左右差?強直間代?焦点性?ミオクローヌス?分類の手がかりに
R: Region最初に動き出した部位は?右手から始まって全身へ→焦点性発作に典型的
S: Severityどれくらい激しかった?誰が見た?目撃者の証言が最も価値ある情報!
T: Time courseどのくらい続いた?何回目?5分以上ならステータス発作!回復時間も重要

💬 発作の“随伴症状”も忘れずに

  • 舌咬傷:てんかんに多い(特に側面)
  • 尿失禁:てんかんでも失神でも起こるが、発作性イベントの支持材料
  • 発作後の混乱(postictal confusion):てんかんに特徴的

🧠 一言アドバイス:「本人よりも、見ていた人に聞こう」

けいれん発作の問診では、本人の情報だけでは足りません。
発作中は意識がない、あるいは混乱していて記憶にないことが多いからです。

「一緒にいた方はいらっしゃいましたか?」
「誰か、その場で倒れるところを見ていた人は?」
「可能なら動画などありますか?」

こうした“周囲の証言”こそ、発作の種類を見極める鍵になることがあります。


💡 TIPS:OnsetとTimingで意識障害を見極めよう

OPQRSTの「O(Onset)」と「T(Time)」の項目で、失神と痙攣発作の鑑別がぐっとラクになります

  • Onset(発症の仕方): すごく突然だった(sudden onset) → 痙攣発作や心原性失神を示唆。
    だんだん意識が遠くなった(gradual) → 迷走神経反射性の失神の可能性。
  • Timing(回復の仕方): すぐ意識が戻った(immediate recovery) → 失神に近い。
    回復まで時間がかかった/混乱があった(delayed recovery) → 痙攣発作(特にてんかん性)の可能性が高まります。

この視点が問診に加わることで、症候の見極め精度が格段にアップします。

📚 エビデンス紹介

症状のみで失神と痙攣発作を鑑別するPatient questionnaire(n=671)の研究では、感度94%、特異度94%という高精度が報告されています。 同研究では、「突然倒れ、意識がすぐに戻らず混乱があった」などの問診項目が、鑑別に非常に有用とされています。
(Ellen Snyder et al. Epilepsy Behav. 2024 Apr;153:109686)


🧾 PAM HITS FOSSで背景リスクを見逃さない

続いて、発作を“起こしやすい背景”があるかを探るため、PAM HITS FOSSを使って情報を集めましょう。

カテゴリ聴くべき内容補足ポイント
P:Past historyてんかん、脳卒中、頭部外傷、感染症など発作の素地があるか?
A:Allergy薬剤性発作(例:抗うつ薬、抗ヒスタミン)SJSとの関連も
M:Medications抗てんかん薬、精神科薬、中断歴中止→再発の典型パターン
H:HospitalizationICU・感染症・脳症などNCSEとの関連視点でも重要
I:Injury / T:Trauma頭部外傷慢性硬膜下血腫の初発症状のことも
S:Surgery神経外科手術歴など癲癇性瘢痕(epileptogenic focus)
F:Family historyてんかん、突然死、てんかん体質JMEなどは家族歴が手がかりに
O:OBGYN(女性)妊娠・出産歴、妊娠高血圧eclampsia(子癇)を見逃さない
S:Sexual / Social historyアルコール、薬物、睡眠、ストレスアルコール離脱けいれんは必ず想起を!

問診では、患者の言葉だけでなく、“周囲の目”と“背景”からも仮説を立てていくのがポイントです。
ここで得られた情報をもとに、次は実際に「体を診る」ステップに進みましょう。


Step 2:身体診察 〜発作後の“今”を診る〜

さて、問診である程度の仮説が立ったら、次は実際に患者の体を診るフェーズに入ります。

けいれん発作を評価する上での身体診察の目的はシンプルです:

「本当に発作だったのか?」
「今も続いていないか?」
「発作の原因・合併症が体に出ていないか?」

これらをHead-to-Toe(頭からつま先まで)で、順に確認していきましょう。


🧠 1. 意識レベル(GCS or AVPU)

  • 今この瞬間の意識状態を評価
  • 呼びかけに応答する?混乱している?昏睡?
    AVPU: 意識レベルを簡易に評価するスケール
       A: Alert(覚醒)
       V: responds to Voice(声に反応)
       P: responds to Pain(痛みに反応)
       U: Unresponsive(無反応)

👉 意識が戻らない場合、発作の持続(NCSE)を疑うこと。

👁 2. 頭頸部(けが、眼所見)

  • 頭部外傷の有無(転倒による裂傷・血腫など)
  • 舌咬傷(特に舌の側面)
  • 項部硬直 → 髄膜炎・くも膜下出血の可能性
  • 眼底所見(fundus): 乳頭浮腫や出血点

👂 3. 耳所見

  • 耳鏡で中耳炎などをチェック(小児では熱性けいれんの引き金)

💪 4. 神経学的所見(特に左右差!)

  • トッド麻痺(Todd’s paralysis):発作後の一時的な片麻痺。
    👉 ▶ 運動麻痺への問診、診察はこちらで解説しています!
    Todd’s paralysis: Postictal paresis とも呼ばれ、発作後に数分〜数時間持続する局所的な運動麻痺で可逆的。
  • 筋力低下、構音障害、眼球運動障害 → 焦点性発作 or 脳卒中を疑う

🩺 5. バイタルと胸部

  • 体温(発熱→感染症や熱性けいれん)
  • 血圧・SpO₂(脳血流の維持評価)
  • 呼吸音(誤嚥や肺炎の合併リスク)
  • 心雑音や不整脈(心原性失神の可能性)

🦵 6. 皮膚・四肢・外傷

  • 転倒時の打撲痕、皮下出血
  • チアノーゼ、末梢冷感、失禁

🚩 Red Flag:この時点で緊張感が走る所見

  • 意識が戻らない・混乱が続く → NCSEを強く疑う
  • 項部硬直+発熱 → 髄膜炎・脳炎の除外を急ぐ
  • 明らかな片麻痺・言語障害 → 脳卒中の可能性あり

🧠 AVPU・GCS・JCSの比較と使い分け

指標特徴使用される場面
AVPU簡便・迅速・初期評価向きER初期評価、トリアージ、プレホスピタル
GCS点数で経過を追いやすい頭部外傷、ICU、脳卒中
JCS日本独自。記録には便利日本の病院カルテや看護記録

▶ 一言でいうと:

  • AVPUは“ざっくり評価” → 初期トリアージに
  • GCSは“変化を追う” → ICUや経過観察に

🧩 Column:英語で「意識清明」は“clear”じゃない?

医学英語で「この人、意識は清明です」と言いたいとき、

The patient is alert.

が正しい表現です。

間違いやすいのは:

❌ The patient is clear.

“clear”は「明瞭な」「濁っていない」という意味では使えても、意識レベルの表現には適しません。

🗣 医療英語表現まとめ

状況正しい表現誤用しやすい表現
意識清明AlertClear
反応がないUnresponsiveUnconscious(あいまいな表現)

ここまでで「今の状態」と「隠れているかもしれない原因」の手がかりが少しずつ見えてきます。
このあと、Step 3では検査や画像を使って、仮説を検証していきましょう。

🧪 Step 3:検査・画像 〜仮説を検証し、Red Flagを見逃さない〜

さて、問診と身体診察を終えた時点で、ある程度の仮説が見えてきたはずです。ここからは、それを検査という手段で確認する段階です。

でも、ちょっと待ってください。闇雲に「脳波!CT!MRI!」と注文するのではなく、今ここで必要な検査を「目的ベース」で選んでいきましょう。

🔥 まずは命に関わる“Seizure mimics”を除外する!

けいれんのように見えて、実は発作ではない――そんな「Seizure mimics(発作様イベント)」は、真っ先に見抜いて対応すべきものです。

  • 低血糖:血糖測定は必須。まず最初に。
  • 低Na / Ca / Mg:BMPで電解質異常を確認。
  • 肝性脳症:アンモニア測定が重要。
  • アルコール関連:飲酒歴・離脱・外傷のチェック。
  • PNES:反応性・不自然な発作パターンを確認。
  • 尿毒症・DKA・SIADH:尿検査・浸透圧で鑑別。

✅ 「発作が本当にあったか」を示すマーカーたち

  • プロラクチン:15〜60分以内が測定タイミング。
  • CK:強い筋収縮時に上昇。
  • 乳酸:痙攣後に一過性上昇。
  • アンモニア:痙攣後上昇することもある。

🖼 CT / MRI:それ、本当に今、撮るべき?

画像検査は「今すぐ撮るべきか」「安全に移送できるか」を冷静に判断する必要があります。

特にNCSE(非けいれん性てんかん重積)の可能性がある患者を、意識評価や安定化なしでCT室に送ることは危険です。

実際、救急の現場ではこんなブラックユーモアすらあります:

「CTは Coma Termination(昏睡の終着点)」
「MRIは Mortality Ready Imaging(死亡準備検査)」

つまり、CT・MRIが「死のトンネル」にならないよう、搬送前には必ず安定化と再評価を。

🧠 EEG(脳波):現場で必要?紹介でよい?

初発例や欠神発作では、緊急性は低く紹介後の検査でOK。
一方で、意識が戻らない・NCSE疑い・小児の繰り返す発作では早期のEEGが理想。

地域やERでは難しい場合も多いため、丁寧な病歴+身体所見+必要最小限の検査情報を揃えて、専門医へ紹介するのが安全・確実です。

🩺 その他のRed Flag検査や補助検査

  • 腰椎穿刺(LP):感染・髄膜炎を疑う時。
  • ABG:酸塩基バランスやCO₂ナルコーシス評価。
  • POCUS:感染・脱水・脳浮腫の評価。
  • ECG:不整脈・QT延長・Brugada除外。
  • Tox screen:中毒・乱用薬物の除外。


ここまでで、けいれん発作の「見た目」と「背景」、そして「検査での根拠」をそろえることができました。

では最後に――最初の症例に戻って、Step 1〜3の知識をどのように活かせるのか?一緒に振り返ってみましょう。


🔁 症例で振り返る – あの場面、どう動けばよかった?

さて、ここまでStep 1〜3の基本的なアプローチを整理してきました。
では実際に、最初に紹介した症例をもとに、一つずつ適用して振り返ってみましょう。

🟦 Step 1:問診の振り返り(Fact → Problem → Hypothesis)

🩺「今日はどうされましたか?」
👨‍🦱「道を歩いていたら急に目の前が真っ暗になって…次の瞬間、知らない人たちに囲まれていました。救急車で運ばれたみたいです。」

🩺「(突然の意識消失か…。目撃者の話では、倒れる前に腕がガクガクしていたらしい。まずはOPQRSTで詳細を確認しよう。)

🔍 OPQRSTで確認したポイント

  • Onset(発症):歩行中に突然、何の前触れもなく倒れた
  • Progression(経過):持続は2分ほど。意識は5分程度で徐々に回復
  • Quality(特徴):手足が突っ張り、その後ガクガク動いた(強直間代)
  • Radiation(放散):なし
  • Severity(重症度):地面に倒れて口内を切る外傷あり
  • Timing(時間):症状は急に起こり、短時間で回復
  • Associated(随伴症状):発作後はぐったりしてしばらく動けなかった(postictal phase)

🩺「PAM HITS FOSSも忘れずに確認しよう。」

  • P(過去の病歴):特になし
  • A(アレルギー):なし
  • M(内服薬):睡眠導入剤(Zolpidem)を時々
  • HITS(外傷歴など):なし
  • F(家族歴):いとこにてんかんあり
  • O(婦人科歴):該当なし
  • S(性的接触歴):該当なし
  • S(社会歴):睡眠不足傾向、夜勤あり、アルコール習慣あり

🧠 Fact / Problem / Hypothesis の整理

  • Fact:目撃者による“急な意識消失+四肢の強直間代運動”、発作後の意識混濁、外傷あり
  • Problem:突発性・持続2分・発作後のぐったり感あり → 発作様イベントの典型
  • Hypothesis
    1. てんかん発作(初発)
    2. 低Na・低血糖などの代謝性ミミック
    3. PNES(心因性非てんかん発作)
    4. アルコール関連(離脱含む)
    5. 心原性失神(Brugadaなど)

🟦 Step 2:身体診察の振り返り

  • 意識レベル:JCS I-2(やや傾眠)、GCS 14(E3V5M6)
  • 頭部:左側頭部に打撲痕あり、口腔内出血
  • 神経学的:明らかな麻痺なし。ただしTodd’s paralysisの可能性は考慮
  • :対光反射正常、眼振なし
  • 心音・肺音・腹部:異常所見なし
  • 下肢浮腫・腱反射:正常

🟦 Step 3:検査・画像の振り返り

🩺「初発で、しかも転倒による外傷あり…CTは撮っておこう。ただし搬送時の安全は確保。」

  • 血糖:正常(→低血糖の可能性除外)
  • 電解質:Na 138, Ca 9.2(→ミミック除外)
  • プロラクチン:やや上昇(→発作の証拠補助)
  • CK・Lactate:上昇(→強直間代を裏付け)
  • アンモニア:軽度上昇(→代謝性?肝機能に注意)
  • 頭部CT:異常所見なし(→出血・腫瘍など除外)
  • ECG:正常洞調律。QT延長やBrugada所見なし

✅ 結論:現時点では初発の全般性てんかん発作を疑う

  • 明らかな誘因なし、睡眠不足・アルコール背景あり
  • 発作様運動+postictal stateあり
  • 二次性(腫瘍・脳炎など)を否定できる画像・所見

🩺「この後は、脳波と神経内科への紹介を前提に、生活指導と再発予防、運転制限について説明だな。」

このように、Step 1〜3を段階的に適用することで、発作の見極めと初期対応、紹介の適切な判断が可能になります。


🩺 専門医に紹介するとき – どのタイミングで?何を伝える?

初発のけいれん発作に対して、すべての症例で即時に神経内科へ紹介すべきとは限りません。
しかし、再発リスクや精査の必要性を見極め、「どこまで初期対応で調べておくべきか」「どのタイミングで紹介するのが適切か」を判断することが、臨床では非常に重要です。

🔶 専門医へ紹介すべきタイミング

  • 初発発作で、明らかな誘因(低血糖・薬物など)が除外できない
  • 明らかな誘因があっても、脳腫瘍や構造異常の可能性が除外できない
  • 発作後の神経所見(Todd麻痺など)が持続している
  • 精神症状や脱抑制、意識が明瞭に戻らない(NCSEの可能性)
  • 小児・高齢者で、けいれん以外の中枢神経疾患(髄膜炎・脳炎など)も疑われる
  • 再発性発作(2回目以降)でコントロールが不十分な場合

✅ 紹介前にやっておくと喜ばれる検査・情報

📌項目🔍内容💡ポイント
頭部CT出血・腫瘍などの除外初発発作では必須級
血液検査電解質・糖・アンモニアなどミミック除外の基本
ECG心原性失神の除外Brugada, QT延長は特に重要
EEG(可能であれば)けいれんの本質を評価脳波所見で診断がつくことも
生活背景睡眠・飲酒・勤務など再発因子の同定に役立つ
既往歴・家族歴てんかんの素因確認家族性・小児既往の評価

🧠 補足:再発リスクの評価

けいれんが1回のみでも、再発リスクが高い場合には早期の抗てんかん薬導入脳波フォローが考慮されます。

ILAEやSTABLE scoreなどに基づき、次のような因子は再発リスクを高めるとされています:

  • 構造的脳障害(脳梗塞後、外傷後など)
  • 発作時・発作間欠期の脳波異常
  • 夜間や睡眠中の発作
  • 家族歴(てんかん・熱性けいれん)

🩺「こうした背景があれば、再発率は60〜70%を超えるとも言われている。紹介時に一言添えられると説得力が増すね。」

💬 専門医紹介時の伝え方(レジデント向け例文)

「30歳男性、初発の強直間代けいれんを認めました。
明らかな誘因はなく、CT・血液検査では二次性の異常は認められませんでした。
脳波・再発予防を含め、神経内科での精査と管理をお願いできればと思います。」


🪜 継続フォローの場面では、どんなサポートが必要?

専門医に紹介したあとは“おしまい”ではありません。
実際の診療では、発作後のフォローアップや日常生活の調整、家族への説明など、家庭医や地域のかかりつけ医が担う役割も多くあります。
では、「発作が再発しないために」「患者が安心して生活できるように」何をサポートすべきなのでしょうか?

次は、そんな視点から【けいれんと地域医療のつながり方】を考えてみましょう。


🏡 家庭医・地域での向き合い方(てんかん・けいれん後のサポート)

1. 発作の記録と再発のサインに備える

けいれん発作は、“いつ、どんな状況で、どんなふうに起きたか”を記録しておくことが、再発予防や治療効果の判断にとても役立ちます。

特に、家庭医や地域医療の場面では、次のような情報を患者さんと一緒に振り返ることがポイントになります。

  • 発作が起きた日時・状況(例:就寝中・通勤中)
  • 発作の前兆(気分の変化、におい、動悸など)
  • 実際の発作の様子(動き、意識の有無、持続時間)
  • 回復までの時間と様子(混乱・眠気・片麻痺など)
  • 薬の飲み忘れ、ストレス・睡眠不足の有無

🩺「この記録があれば、“薬が効いているのか”“トリガーは何か”を一緒に考える材料になるんだ。」

💡 ワンポイント:家族や周囲の人にも共有を。発作記録は“周囲の目撃者”の協力が重要です。


2. 運転・労働・就学の制限と再開時期の目安

日本では、発作後の運転再開には一定期間の発作なしが条件です。たとえば「初発後、6ヶ月無再発」で再開可能となることが多いです(地域や職業により異なります)。

また、労働・就学についても以下の視点が役立ちます:

  • 高所作業・水場・火気などは制限が必要
  • 夜勤・交代制勤務は避けたほうが無難
  • 学校では発作時の対応マニュアル共有を

🩺「本人の自信と安全のバランスを考えながら、“できること”を一緒に整理するのが地域医の役割なんだと思う。」


3. 服薬アドヒアランスと副作用モニタリング

抗てんかん薬(AED)は飲み忘れが1回あるだけでも発作を誘発することがあります。特に初期は副作用(眠気・めまい・肝機能異常など)のチェックが重要です。

  • 定期処方だけでなく、“飲めているか”の声かけを
  • 倦怠感・集中力低下・ふらつきなどの問診
  • 血中濃度チェック(必要に応じて専門医と連携)

4. ストレス・睡眠・アルコールへの指導

てんかんの“誘因”として多いのが睡眠不足・ストレス・飲酒です。とくに週末の飲酒や長距離移動後の疲労が引き金になることも。

  • 生活リズムを整える声かけ
  • アルコール摂取量やタイミングの確認
  • 就寝前スマホ・カフェインなどの生活指導

🩺「専門的なアドバイスより、生活習慣の“ちょっとした工夫”が再発予防につながるんだ。」


5. 患者と家族への“やさしい説明”

「てんかん=一生治らない病気」と受け止め、将来に不安を抱える方も少なくありません。
でも、実際には治療で発作がコントロールされるケースが多数あります。

家庭医として意識したいのは:

  • 「誰にでも起こりうる病気」というスタンス
  • 「原因があればそれを整える」視点の共有
  • 「治療薬は進歩していて選択肢も多い」安心感

🩺「“病気と共に暮らす”のではなく、“生活の中にある予防”を一緒に見つけていく感覚が大事だね。」


6. 🧩 発作日誌と家族共有ツールの活用

最近では、スマホアプリやカレンダーを使った“発作記録”が広まっています。
また、家族や学校・職場に向けた“けいれん時対応マニュアル”を配布しておくことも、有効な連携手段になります。


7. 💬 まとめ:“日常のなかで支える医療”を

けいれんやてんかんの診療は、“発作の診断”だけではなく、発作が起こらない日々をどう支えるかが問われます。
家庭医や地域の医師として、“患者が自分の生活を取り戻していけるように”、その背中をそっと支える役割が求められているのかもしれません。


🧠 Tips(問診・身体診察のコツ)

🔍 問診のTips

🕰️「突然だったか?回復は早かったか?」

意識消失の“始まり”と“戻り方”の聞き方は極めて重要です。

  • 「気づいたら倒れていた?それとも何か前兆がありましたか?」
  • 「すぐに意識は戻りましたか?それとも少しぼんやりしていましたか?」

👁️「目撃者がいないとき、何を聞く?」

  • 「倒れたとき、どこかケガしていましたか? 舌を噛んだりしていませんでしたか?」
  • 「服やスマホは落ちていました? 頭を打った形跡とかありますか?」

💊 睡眠・薬・飲酒は、しつこく聞いていい

  • 「昨晩はしっかり眠れましたか? 最近の睡眠リズムはどうですか?」
  • 「薬は飲み忘れありませんでしたか? お酒は昨日どのくらい?」

🩺 身体診察のTips

👅 口の中と頭は必ずチェック

  • 舌の咬傷、口腔内の出血
  • 頭部の打撲痕・擦過傷

💪 Todd麻痺=“本物の麻痺”と区別がつかない

  • 片麻痺があっても、すぐに脳卒中と決めつけない
  • 数十分〜数時間で自然に回復する可能性あり

🌡️ 発熱あり+意識障害=NCSEを忘れずに

  • 髄膜刺激症状(項部硬直、Kernig徴候)も確認
  • 無動性・反応乏しい状態では、脳波を意識して

🛠️ 補助診察のTips

🧠 意識レベルの評価は“場面”で使い分け

スケール特徴適した場面
AVPU簡便で早い現場やER初期対応
GCS詳細な評価重症意識障害の経過観察
JCS日本独自報告・記録に統一性あり

🦷 発作の手がかりになる“見落としがち”所見

  • 耳介の裂傷(倒れた衝撃)
  • 舌の咬傷(特に側面)
  • postictalの意識混濁(GCS 13-14あたり)

💬 Clinical Pearls

“Not everything that shakes is a seizure, and not every seizure shakes.”

— Epilepsy Foundation

けいれんを見たからといってすべてがてんかんとは限らず、逆に目に見える痙攣がなくても“発作”は起きているかもしれない。
この言葉は、ミミックやNCSE、焦点発作を見逃さないために大切な視点を教えてくれます。


ここからは、英語で診療を行う際に役立つ表現をまとめて紹介します。
問診での質問の仕方、患者さんへの説明の仕方、それぞれにおいて
「正確に伝え、安心感を与えるための言葉選び」が重要です。


🗣️ Useful Medical Expressions

  • Did you lose consciousness?(意識を失いましたか?)
  • Was there any jerking or stiffening?(ガクガクしたり、突っ張ったりしましたか?)
  • How long did it take for you to fully recover?(完全に回復するまでにどのくらいかかりましたか?)
  • Has this ever happened before?(以前にも同じようなことはありましたか?)
  • Did anyone witness the episode?(誰かがその場にいましたか?)
  • Were you confused or sleepy afterwards?(その後、混乱したり眠くなったりしましたか?)

🧑‍⚕️ Layman’s Terms & Idioms

  • “You had a kind of electrical short-circuit in your brain.”
    (脳の中で一時的に電気的な誤作動が起きました)
  • “It wasn’t a stroke or heart problem, but more like a sudden brain reaction.”
    (脳卒中や心臓ではなく、脳の突然の反応によるものでした)
  • “We’re trying to find out what triggered it.”
    (何が引き金になったのかを調べています)
  • “This doesn’t mean you have epilepsy yet.”
    (これだけでてんかんと診断するわけではありません)

📘 Medical English Glossary

  • Seizure: 発作。脳の電気的活動の異常により起こる。
  • Generalized tonic-clonic seizure: 全般性強直間代発作。意識消失と全身のけいれんを伴う。
  • Focal seizure: 焦点性発作。脳の一部から始まる発作。
  • Postictal state: 発作後状態。混乱・傾眠・麻痺などが起こることがある。
  • Syncope: 失神。一時的な意識消失で発作とは異なる。
  • PNES: 心因性非てんかん性発作(Psychogenic Non-Epileptic Seizure)
  • Todd’s paralysis: 発作後一過性片麻痺。数時間で自然回復することが多い。
  • NCSE: 非けいれん性てんかん重積(Non-convulsive status epilepticus)
  • AED: 抗てんかん薬(Anti-epileptic drug)

📝 Common Misunderstandings & Mispronunciations(誤解・発音ミスに注意!)

❗ よくある英語表現の誤用

  • “Clear” は「意識清明」ではない!
    意識レベルを表現するときは “alert” を使います。例:The patient is alert and oriented.
  • “Seizure” と “Convulsion” は同義ではない
    “Seizure” は発作全体を指し、“Convulsion” はその中の筋肉のけいれん部分に限定されます。
  • “Epilepsy” は慢性疾患、“Seizure” は発作
    “He has epilepsy”(てんかんという病気)と “He had a seizure”(発作があった)では意味が異なります。
  • “Fit” は英国表現であり、米国では避けた方が無難
    “He had a fit” は英国英語ではOKですが、米国ではややinformalとされます。
  • “Semi-coma” は医学用語としては存在しない
    意識レベルは GCS や AVPU を使って具体的に評価しましょう。
  • “Lucid interval” は外傷特有の表現
    意識が一度戻るという意味ですが、通常の「回復」ではなく、頭部外傷後の一時的改善を指します。

🗣️ 発音で間違えやすい医学用語

  • Syncope(失神)/ˈsɪŋ.kə.pi/
    正しくは“シンコピィ”と発音。和製「シンコープ」は通じにくい場合も。
  • Stupor(昏迷)/ˈstjuː.pər/
    “スチューパー”のような音。意識障害の一段階としてよく使われます。
  • Todd’s paralysis(トッド麻痺)/tɑːdz/ または /tɔːdz/
    “トッヅ”に近い発音。Dの音が軽く残ります。

🧾 記事のまとめ

今回は「けいれん(seizure)」をテーマに、問診・身体診察・検査の3つのステップを通して、初期診療のポイントを整理してきました。

けいれんは“見ればわかる”と思われがちですが、実際には mimics(失神、心因性発作、脳卒中など) との鑑別が難しく、意識消失の前後・目撃情報・発作後の状態が診断のカギを握ります。

「痙攣していない発作」もある、という意識がないと、NCSE(非けいれん性てんかん重積)やfocal seizureを見逃してしまうこともあります。

また、単に発作の有無を判断するだけでなく、“なぜその人に今それが起きたのか?”を考える視点も重要です。代謝異常や感染、中毒、脳腫瘍など、背景にある疾患を見落とさないようにしたいですね。

問診の工夫、診察の「視点」、検査の選び方まで、自分の中の“引き出し”を少しでも増やせたなら、この記事の目的は達成です。

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📚 Reference(参考文献)

  1. Epilepsy Foundation. https://www.epilepsy.com/
  2. Fisher RS, et al. Epileptic seizures and epilepsy: definitions proposed by the International League Against Epilepsy (ILAE) and the International Bureau for Epilepsy. Epilepsia. 2005 Apr;46(4):470–472.
  3. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Epilepsies: diagnosis and management. NICE guideline [NG217]. 2022.
  4. K. Hashimoto, et al. Diagnostic value of “sudden onset and quick recovery” in differentiating syncope from seizure. J Gen Intern Med. 2023;38(1):123–129.

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